ミステリ小説は読まないので知りませんでしたが、作者が読者を騙す技法として「叙述トリック」というものがあるそうです。叙述トリックを簡単に説明すると文章の書き方(叙述)で読者を騙すトリックで、例えば下のようなコピペが叙述トリックに分類されるようです。
さっき、2万4千円のヘッドホンが突然壊れた。
音楽を大音量で聴き過ぎたせいか、いきなりプチッと音が出なくなった。
俺はムカついて思わずわざとテレビを床に落とした。
ズドンとテレビが床に落ちた振動を感じて俺はふと我に返った。
何やってんだ俺は。このテレビは15万もしたじゃないか。
たまたま落とした場所には布団が敷いてあって
落ちた振動は多少あったが落ちた音は全くしなかった。
たぶん壊れていないだろうと思いながらテレビの電源を入れてみた。
映像は普通に映るのだが、音が全く出なくなっていた。
最悪だ。15万円のテレビまで壊れてしまった。
それにしても今日は外が不思議なくらいに静かだ・・・
気晴らしにちょっと散歩にでも行ってみようかなぁ。
ヘッドホンやテレビが壊れたように叙述で思わせておいて、本当に壊れていたのは自分の耳だというオチです。前から知っているコピペですが、こういうのを叙述トリックというのは知りませんでした。このコピペの例だと叙述トリックの中でもさらに「
信頼できない語り手 - Wikipedia」(リンク先ネタバレ注意)に属するようです。
他にもそれと知らずに触れているものがあるのではないかと思い以下色々探してみました。
まず「
論より詭弁
」
(Amazon.co.jpリンク)という本に書いてあった同じ少年についてネガティブに書いた場合とポジティブに書いた場合の文章です。
(ネガティブ)
頑固で柔軟性に欠け、融通がきかない。自分の思い通りにしていたいとの気持ちが強く、他人から干渉されることを嫌う。目下のものに対しては、ボス的で強圧的な態度に出るが、目上の者に対しては卑屈に振舞う。
(ポジティブ)
意志が強く、一途な性格で、曲がったことが嫌い。自立心旺盛で、自分のポリシーをもっており、周囲の意見に流されない。年下の者に対しては、親分肌なところを見せるが、年長者に対しては礼儀を守り、謙虚である。
履歴書に書く短所は長所に聞こえるように書けとよく指南されますが、あれはつまり叙述トリックを使えということです。
文章だけでなく漫画の吹き出しやコマ割などを使った叙述トリックがないかと探してみたら、ありました。
「修羅の門」という格闘技漫画ですが、ある技を別の技(無空波)だと騙す際に叙述トリックのようなことをしています。下が該当ページ。

左のコマで立っているのが主人公で、同じコマの吹き出しには「陸奥圓明流奥義 無空波」とあります。吹き出しのセリフは同じコマに描かれているキャラが喋っているという先入観がありますが、実はよく見ると右ページ下の人物が言ってるセリフです。
このあと無空波という技について謎解きのようなことが行われ、主人公と対戦する相手は猛特訓によって無空波(?)をかわす術を会得します。しかし無空波だと思っていたのは別の技。本当の無空波が繰り出されて決着します。その際、主人公は「無空波だなんていってない」とちゃんとタネ明かししてくれます。確認のために上のページをもう一度見直した人は多いのではないでしょうか。
追記(8/14):ちなみに、次の話では左のコマを回想にして始まります。誰が発したセリフか確認するのに一話(連載ペースは一ヶ月)またぐ必要があります。こっちが肝かもしれません。
【Amazon.co.jp】 修羅の門(1) (講談社漫画文庫)
【余談】
叙述トリックの大半はダジャレ。
例:「きちがいじゃが仕方がない」