ヤツタカネアザミ(八高嶺薊 キク科アザミ属) 
鋭い棘を持ったアザミですね。
このアザミはヤツガタケアザミ(八ヶ岳薊)と呼ばれていました。
1913年に八ヶ岳で、採集されたアザミがヤツガタケアザミの名前で新種のアザミとして標本とともに発表されました。ナンブアザミより葉のトゲが長く,総苞片の先端が全てトゲというアザミです。その後、日光白根・尾瀬などでも発見され、分布は、八ヶ岳・霧ヶ峰・日光白根・尾瀬とされました。
しかし、標本と実際に八ヶ岳に咲くアザミと較べると違います。日光白根・尾瀬のアザミは標本に近く、八ヶ岳に咲くアザミは新種だと・・・
しかし、ヤツガタケアザミは使用済で、やむなく『ヤツタカネアザミ(八高嶺薊)』となりました。それがこの薊です。
研究者が採取場所を間違えたのかとも考えられるのですが、日光白根や尾瀬周辺のアザミも、標本とは完全に一致していません。よく似ているそうですが・・・

それにしても、八ヶ岳にはないアザミが八ヶ岳薊、八ヶ岳のアザミは八高嶺薊とは、ややこしいですね。
そうしたことから、八ヶ岳薊をオクヤマアザミ(奥山薊)またはオネトネアザミ(尾根利根薊)と呼ぶようにしています。一度つけた名前をかえるのは大変なようです。
正式なヤツガタケアザミはまだ幻のアザミなのだそうです。

アザミは、名前なんて人間が勝手につけたもので、こちらは関知しないといっているかもしれません。
シラネアザミ(白根薊 キク科 ) 
昨日、アザミの名前は「あざむく」が語源という話をしましたが、この薊は、「アザミ」と名乗っていますが、正式な薊たちの「アザミ属」ではなく、「トウヒレン属」・・・
アザミになりすましている偽アザミもいます。
もっとも、名前を付けたのは人ですが・・・
ほかにも、ヒレアザミとかキツネアザミなんていう花もあります。キツネアザミなんていかにもキツネが「あざむく」ようです。

このシラネアザミは、アザミに似ててるかなという感じですね。
細身で、小さいアザミという感じではありますね。
葉に棘は無いので、「あざむく」ことは無く手で触っても危険はなく友好的です。

トウヒレン属は北半球に広く分布して約400種あり日本には25種あるそうです。
トウヒレンは唐飛廉または塔飛廉と書くのですが、トウは違う字で書かれるようにて由来はよくわからないようです。「唐」は中国風ということかもしれませんが・・・
飛廉はヒレアザミのことだそうです。ただヒレアザミはヒレアザミ属でトウヒレン属ではありません。昔の名前は分類より見た目でした。もっとも、ヒレアザミとシラネアザミが似ているかというと、似ているのは花の色くらいですが・・・
ノアザミやノハラアザミなどの花の先は棘のある花らしく鋭くとがっていますが、シラネアザミは、先端が割れて。噴水のように広がって丸まるところが可愛いです。これは、めしべだそうです。
この形はトウヒレンの仲間だけでなくタンポポの仲間、そして、ニガナ、アキノノゲシなどキク科の植物には多く、丸まり方はいろいろですが、2つに分かれている花は多いようそうです。
オヤマボクチ (雄山火口 キク科ヤマボクチ属) 
昨日からここまではキク科の花なのですが・・・
これが菊の仲間・・・
というより、これが花という方がいいかもしれません。
花というのにためらってしまいますね。
この花は林の中のせいか50㎝もありませんでしたが、日当たりがいいところでは背が高く2メートル近くなることがあります。
この花は巨大なアザミの花にも、似ていますが、咲き始めは緑で、やがて暗い紫となり、表面には細かな綿毛のため花は目立ちません。
アザミのようなトゲは葉にはありません。美しいとは言えませんが、他に類をみないユニークな自然の造形かもしれません。

漢字で書くと雄山火口なんて、火山みたいですね。雄山は山に生えて雄大で、ボクチは「火口(ほくち)」のことで火打ち石を打って出た火を移すための綿毛です。この花の、葉の裏の綿毛を乾燥して火をつけるとき利用したそうです。
北信州では昔から、団子や餅にオヤマボクチの葉を入たり、蕎麦のつなぎに使います。蕎麦に使う場合は葉をゆで、天日で乾かすという作業を繰り返し、残った繊維だけを使うそうです。
北陸新幹線の駅のある飯山では、オヤマボクチをつなぎに使用した「富倉そば」があります。オヤマボクチはそのものに味がなく、また、つなぎに使う量は1キロに5グラムつまり200分の一で、蕎麦本来の風味が味わえるそうです。
十割蕎麦といっていい蕎麦ですが、小麦粉に比べ蕎麦が切れにくいため、のどごしがよく、腰が強い香り高い蕎麦になるということです。
わたしはまだ食べた事は無いのですが・・・
ツリフネソウ(釣船草 吊舟草 ツリフネソウ科ツリフネソウ属)<

毎年取り上げている花なので、新しいことは思いつかないので、いつも書いていることばかりです。
3枚の花弁を上手に組み合わせて、よくこんな形ができるなと・・・
神様はオコジョのような凡人とは雲泥の差があります。
当然ですが・・・
名前の由来は帆のある船、または、華道で使う「釣り船花入れ」という花器のようと二つの説があります。どちらが正しいかはわからないとか・・・
神が作ったのですらそう当然ですね。
細い花の柄に舟を吊り下げたようなという形は共通のようです。
こんな船に乗れたら素敵ですね。

大きな口をあけた魚に似ていると言う人もいました。
そして蝶に見えるという人とも・・・
こちらの正面から見た場合のようですね。
あなたには何にみえるでしょうか・・・
花の中も素適な装飾がされています。虫も喜んで蜜を吸いそうです。
信州ではイビハメバナ、ユビハメ、ユビサシバナと呼びこともあります。
子供が、小さいこの花の中に小さな指をはめて遊んだことからの名前です。

流れの脇にいっぱい・・・
この花も湿地を好む花で、小川の縁などに咲く花です。
ママコナ(飯子菜 ゴマノハグサ科 ママコナ属)

「ママコナ」とは、何か可愛い名前ですね。
ママ(母)と子を連想しそうですが、飯の「ママ」です。
その「ママ」ではなくて、
この写真は正面から見ていますが、花の中に白い斑点が二つあります。
これを飯粒が2粒ついているように見えるから飯子菜です。
しかし、外にも別に、種が白く米粒に見えるからという説もあり、定説とはなっていないそうです。
昔からの名前ですから当然ですね。

柔らかな瑞々しい葉が優しげですね。
高さ30-50㎝の、一人前に生きているように見えますが、この花は根の発達をしないで、他の花の根に寄生し、チャッカリと水や栄養分を分けてもらうという半寄生植物です。
ママコナは根が発達させない手抜き(足抜きかも)をして他の花の根に寄生し、水や栄養分を分けてもらうという半寄生植物です。努力しないで、楽をして暮らそうと、虫のいいことです。植物にもいろいろな生き方があるようです。