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2016年11月23日
にぶつかり

「となると、われわれはなんとしてでもあの外壁の内側へはいる必要がありますな」ジャヴェリンは一同に言った。かれはダーニクに目を向けた。「北の外壁の地面がやわらかくなっ

て、外壁をわけなくひき倒せるようになるまで、どのくらいかかると思いますか?」
 ダーニクはすわりなおして、テントの天井をにらんだ。「敵の不意をうつわけだから、水がいきなり噴き出すのはまずい--とにかく、最初は。じわじわとしみだすほうがはるかに

目だたないでしょう。地面がたっぷり水を吸い込むまでにはしばらくかかりそうです」
「しかも、われわれは細心の注意を払わなくてはならない」ガリオンがつけくわえた。「ウルフガーが本当に魔術師なら、必要以上の音を立てればすぐ気づかれてしまう」
「外壁が倒れるときは相当すごい音がするぜ」バラクが言った。「ジャーヴィクショルムの裏手の外壁をやったときみたいに、吹き飛ばしたらどうなんだ」
 ガリオンは首をふった。「意志の力をとき放ったあと、完全に無防備になる瞬間があるんだ。そのすきに同じような能力の持ち主に攻撃されちゃたまらない。生きて、正気のまま息

子を見つけたいからな」
「外壁の下の地面がびしょぬれになるまでどのくらいかかるでしょうな?」ジャヴェリンはたずねた。
 ダーニクは頬をかいた。「今夜とあす丸一日。あすの真夜中には、外壁はぐらぐらになっているはずです。そうしたら、攻撃の寸前にガリオンとわたしが水を一気に噴き出させて泥

の大半を押し流してしまいましょう。泥はすでにたっぷり水を吸ってやわらかくなっているだろうから、大量の水とともに外壁の下から流れだすはずです。そこへ向こう側から岩をぶ

つけ、引っかけ鉤の数十もあれば、あっというまに外壁をひき倒せるでしょう」
「投石器を使いはじめといたほうがいいぜ」ヤーブレックがマンドラレンに言った。「岩が空からふってくるという考えに敵を慣らしとくのさ。そうすりゃあすの夜外壁に岩ががんが

んあたっても、なんとも思わないだろうからな」
「それじゃ、あすの真夜中だな?」バラクが言った。
「そうだ」ガリオンはきっぱり言った。
 ジャヴェリンは姪を見た。「都市の北の地区の配置をおぼえているかね?」
 リセルはうなずいた。
「ざっと描いてみてくれ。いったん中へはいったら、どこに砦をおくか知っておく必要があるんだ」
「お風呂にはいったらすぐに描きますわ、おじさま」
「そのスケッチが必要なんだよ、リセル」
「わたしがお風呂を必要としているほどではないでしょう」
「あなたもよ、ケルダー」ポレン王妃が有無を言わせぬ口調で言った。
 シルクはリセルに意味ありげな一瞥をくれた。
「おかまいなく、ケルダー」リセルは言った。「わたしの背中はわたしが洗います、ご親切に」
「水を見つけにいこう、ダーニク」ガリオンはたちあがった。「地下にってことだが」
「そうだな」鍛冶屋は言った。
 言うまでもなく、月は出ていなかった。雲がこの一週間付近一帯にたれこめて、ますます空をぼんやり見せていた。夜気は冷たく、ガリオンとダーニクは包囲された都市のほうへむ

けて、浅い峡谷を慎重に移動していった。
「冷え込む夜だな」ハリエニシダのしげみを歩きながらダーニクがつぶやいた。
「うん。水はどのくらいの深さにあると思う?」
「そう深くないところにあるだろう。リセルにレオンの井戸の深さをたずねたら、どれもごく浅いと言っていた。二十五フィートもさがれば水が出ると思う」
「それにしても、どこからこんなことを思いついたんだい?」
 ダーニクは闇の中で低い笑い声をたてた。「若かったころ、えらくいばった農場主のところで働いていたことがあってね。そいつは家の中に井戸があったら、隣人たちが感心するだ

ろうと考えた。われわれは一冬井戸掘りに精をだし、ついに掘り抜き井戸に水をひいた。三日後、農場主の家は崩壊した。やつはひどく動転していたよ」
「そりゃそうだろうね」
 ダーニクはぬっとそびえている外壁を見上げた。「これ以上近寄る必要はないだろう。もし姿を見られて、われわれに矢を放ってきても、これだけ距離があれば命中させるのはむず

かしいからな。このまま北側へまわろう」
「そうだな」
 ふたりは物音ひとつたてまいと、念には念をいれて風にざわめくハリエニシダのしげみを慎重に進んでいった。
「ここでいいだろう」ダーニクがささやいた。「この地下になにがあるか見てみよう」
 ガリオンは都市の北の外壁のふもとにあるかちかちの地面の奥へ、静かに思考を沈めた。最初の数フィートはわかりづらかった。モグラやミミズにやたらにでくわしたからだ。いら

だたしげなキイキイ声がして、穴熊の邪魔をしたとわかったこともあった。しばらくたって岩の層、ガリオンは思考をその平らな表面をすべらせて裂け目をさがした。
「その左」ダーニクがつぶやいた。「割れ目じゃないか?」
 ガリオンはそれを見つけて、思考を下へはわせていった。深くなるにつれて、裂け目はじっとりしめりだしたようだった。「この下に水がある」ガリオンは小声で言った。「だが、

裂け目が狭すぎてしみだしてくる水はほんのちょっとだ」
[ 投稿者:づいたのは at 18:30 | づいたのは | コメント(0) | トラックバック(0) ]

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