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2016年07月26日
さきほどからわ
「あいつらはまたやってくるだろう」バラクはそう言うと、岩をまたひとつ持ち上げた。「うしろか消化系統ら攻めてくる可能性はないのか?」
 シルクは首を横に振った。「ないね。調べてみたが、この丘の裏は絶壁だ」
 下の森からまたもやアルグロスが姿をあらわしたかと思うと、あの半しゃがみの恰好で跳びながら吠え声やうなり声をあげた。先頭のアルグロスが道路を渡り終え乳鐵蛋白たとき、また角笛が鳴り響いた。今度はかなり近いところからだった。
 すると突然、よろいかぶとの男を乗せた巨大な馬が森の中から飛び出してきて、雷のような足音を立てながら手向かう獣にのしかかった。よろいかぶとの男は槍を低く下げ、慌てふためくアルグロスたちのど真ん中を一気に突き刺した。巨大な馬は突進しながら一声いななき、蹄鉄をつけたひづめでぬかるんだ大きな泥のかたまりをはね上げた。もっとも大きな拔罐アルグロスの一頭をしとめた槍は、その一撃の激しさで折れてしまった。折れた槍の先は、さらにもう一頭を正面から突き刺した。騎士は折れた槍を捨てると、今度は大きな弧を描きながらだんびらを引き抜いた。それを左右に荒々しく振り回しながら、かれは群れのあいだを突き進み、軍馬は道路の泥とおなじように生者と死者をともども踏みつけた。最後まで突き進むとかれはくるりと向きを変え、ふたたび刀で道を開けながら今来た道をもどった。アルグロスはきびすを返し、吠えながら森の中に逃げこんだ。
「マンドラレン!」ウルフは叫んだ。「こっちだ!」
 よろいかぶとの騎士は、血が飛び散った面頬を上げて丘を見上げた。「まず、怪物の群れを追い散らしてしまったことをお詫びしておきますよ、長老どの」かれは陽気にそう言うと、面頬をもどし、アルグロスを追って雨に湿った森の中に飛び込んでいった。
「ヘター!」バラクはそう叫びながら、すでに行動を開始していた。
 ヘターはきっぱりうなずくと、バラクといっしょに馬に駆け寄った。それから鞍に飛び乗るや、見ず知らずの男を助けるために湿った斜面をまっしぐらに下りていった。
「あなたの友だちは、分別というものがかなり欠如してますな」シルクはミスター?ウルフにそう言って、顔から雨をぬぐった。「あいつらは今にも反撃してくるでしょうに」
「自分が危険にさらされているとは思いもおよばんのだろう。かれはミンブレイト人なのだ。かれらはどうも自分を無敵だと考える傾向にある」
 森の戦いは延々とつづきそうな気配だった。叫び声やバサッという剣の音に加えて、アルグロスの悲鳴が聞こえる。やがて、ヘターとバラクと見知らぬ騎士は馬に乗って森の中から抜け出し、岩山を小走りに駆けのぼった。頂上につくと、よろいかぶとの男はガチャガチャと音をたてながら馬をおりた。「ようこそ、長老どの」かれはミスター?ウルフに景気よく言った。
「下にいたあなたの仲間はすごく元気なひとたちですね」かれのよろいは雨に濡れて輝いている。
「きみに喜んでもらえてなによりだ」ウルフは素っ気なく言った。
「まだ声が聞こえてますよ」ダーニクが報告した。「まだ逃げてるんでしょうね」
「あいつらが臆病なおかげで、午後の楽しみがだいなしになってしまった」騎士はそう言うと、無念そうに剣を鞘におさめ、かぶとを脱いだ。
「わざわざいけにえをふやすこともないでしょう」シルクは気取って言った。
 騎士はため息をついて、「なるほど、そのとおりだ。おぬしはなかなか冷静な男だ」かれは頭を振ってかぶとの白い羽から水を払いおとした。
「これは失敬」ウルフが言った。「こちらはマンドラレン、ボー?マンドール男爵だ。かれにはわしらの仕事を手伝ってもらう。マンドラレン、こちらはドラスニアのケルダー王子。それとバラク、チェレクのアンヘグ王のいとこにあたるトレルハイム伯爵だ。あそこにいるのはアルガー人の王、チョ?ハグの子息のヘター。そこにいる仕事のできそうな男はセンダリアの善人、ダーニク。そしてその坊主はガリオン、わしの孫だ--何世代も省略しての話だが」
 マンドラレンは各人に深々とお辞儀をした。「ようこそ、わが同志」かれは例のにわか景気の声で言った。「われわれの冒険は幸先のいいスタートをきったようですな。ところで、たしの目を惹きつけて離さない、その美しい女性はいったいどなたです?」
「お上手ですこと、騎士どの」ポルおばさんは、ほとんど無意識に濡れた髪を手でかきあげながら、ほがらかに笑った。「わたし、この方を好きになってしまいそうだわ、おとうさん」
[ 投稿者:づいたのは at 11:47 | づいたのは | コメント(0) | トラックバック(0) ]

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