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2016年07月20日
いた以上に頭がいい
「言語道断だ!」ダーニクはまだ耳をほてらせたまま頑強に言った。「あの娘にはたしなみとい嬰兒濕疹うものがまるでない。だれに報告すればいいかがわかれば、文句を言ってやるところだ」
「びっくりしたね」内心ダーニクの狼狽ぶりをおもしろがりながら、ガリオンは同意した。かれらは雪の舞う中庭を突っきった。
 鍛冶場をとりしきっているのは、二の腕がガリオンの太腿ほどもある黒ひげの巨漢だった。ダーニクが自己紹介すると、二人はたちまち鍛冶屋のハンマーの伴奏に合わせて楽しそうに商売談義をはじめた。ガリオンが気づいたのは、センダリアの鍛冶場を埋めつくしていた鋤や踏みぐわ、くわに代わって、ここでは剣、槍、戦闘用の斧が壁にかかっていることだった。炉のひとつで見習人が矢尻をハンマーでたたいており、別の炉ではやせた片月の男がぞっとするような短剣をこしらえていた。
 ダーニクと鍛冶屋は昼近く嬰兒濕疹まで話しこんでいたので、その間ガリオンは中庭をぶらついてさまざまな職人たちの仕事ぶりを観察した。桶屋に車大工、靴屋に大工、だれもがアンヘグ王の大所帯を維持するために仕事にいそしんでいた。ガリオンは見物しているあいだも、昨夜目撃した緑のマントの砂色のひげの男を捜し求めた。誠実な仕事がおこなわれているこの場所にあの男がいる見込みは薄かったが、それでもかれは注意を怠らなかった。
 正午ごろ、バラクが二人を捜しにきて、大広間にかれらを連れ戻した。そこではシルクがぶらぶらしながら熱心にサイコロ賭博を見物していた。
「アンヘグや他のみんなはきょうの午後密談をしたがっている」バラクは言った。「おれはひとっ走り行ってくる用事ができたんで、あんたたちも一緒にきたくないかと思ってね」
「それは悪くない考えだな」シルクは賭博から視線をひきはがした。「きみの親類の戦士連中はサイコロ賭博がへたくそだな。二、三度一緒にころがしてみたいところだ中醫骨傷科が、やめておいたほうがよさそうだ。よそ者に負けたらたいていの連中は気を悪くするからね」
 バラクはニヤッとした。「連中はきっと喜んであんたにふらせるぜ、シルク。勝つチャンスはあんたに負けないぐらいある」
「東にのぼる太陽が西にのぼるような確率だろうよ」とシルク。
「そんなに自分の腕に自信があるんですか?」ダーニクがたずねた。
「連中の腕に、だよ」シルクはくすくす笑って、ぴょんとはねた。「行こう。指がむずむずしてきた。誘惑から指を遠ざけないとな」
「なんとでも言うさ、ケルダー王子」バラクは笑った。
 かれらはそろって毛皮のマントをはおり、宮殿を出た。雪はほぼやんでいたが、風は肌を刺すように冷たかった。
「わたしはみなさんの名前にちょっとまごついているんです」ヴァル?アローンの中心部へ向かっててくてく歩きながら、ダーニクが言った。「一度訊こうと思っていたんですが、たとえばあなたです、シルク。あなたはケルダー王子でもあり、ときにはコトゥの商人アンバーでもある。ミスター?ウルフはベルガラスと呼ばれているし、マダム?ポルもレディ?ポルガラとかエラト公爵夫人とか呼ばれています。わたしの出身地では、通常、人はひとつの名前しか持っていないものなんですが」
「名前は衣服みたいなものなんだ、ダーニク」シルクは説明した。「われわれはそのときに応じてもっともふさわしい名を利用する。正直者は風変わりな衣服や名前を使う必要がほとんどないが、われわれみたいな真っ正直でない者は、ときどき名前を使いわけなけりゃならないんだ」
「マダム?ポルが正直でないと形容されるのを聞くのは、よい気持ちではありませんね」ダーニクは硬い声で言った。
「侮辱する気は毛頭ないよ」シルクはきっぱり言った。「単純な定義はレディ?ポルガラにはあてはまらない。それにわたしがわれわれは正直ではないと言うのは、われわれの関与しているこの問題が、不正にしてよこしまな連中から正体を隠すことをときとして要求するという意味なんだ」
 ダーニクはまだ納得がいかぬふうだったが、それ以上追求はしなかった。
「この通りを行こう」バラクが言った。「きょうはベラー神殿の前を通りたくないんだ」
「どうして?」ガリオンはたずねた。
「宗教上の義務をちょっと怠っているんでな」バラクは苫しげな表情で言った。「ベラーの高僧に出くわしてそのことを思いだしたくない。かれの声はよくとおるし、町全体の面前で叱責されちゃたまらん。分別ある男は公衆の面前で坊主や女に文句を言わせるチャンスを与えたりしないもんだ」
 ヴァル?アローンの通りは細く曲りくねっていて、古い石造りの家々はひょろりと背が高く、二階部分が突きだしていた。断続的に降る雪と冷たい風にもめげず、通りは毛皮をしっかり着込んだ人々であふれていた。
 上機嫌の叫び声やみだらな侮辱の応酬があたりを満たしている。ある通りのまん中では、年配の威厳たっぷりの男が二人、見物人の耳ざわりな声援をあびて雪の玉を投げつけあっていた。
「あの二人は古い友だち同士なのさ」バラクがにやにやしながら言った。「長い冬のあいだ、毎日ああやっている。もうすぐ仲良く居酒屋へ行って酔っぱらい、椅子からころげおちるまで昔の歌をうたうんだ。もう何年もそれをつづけている」
「夏はどうするんだ?」シルクが訊いた。
「石のぶつけっこさ。飲んでうたって椅子からころげおちるのは同じだがね」
「こんにちは、バラク」緑の瞳の若い娘が二階の窓から呼びかけた。「いつまたわたしに会いにきてくれるの?」
 バラクはちらりと上を見て顔を赤くしたが、答えなかった。
「あの女の人が話しかけているよ、バラク」ガリオンは言った。
「聞こえた」バラクはひとこと答えた。
「きみを知っているようだが」シルクがいたずらっぽい顔で言った。
「だれのことでも知っているんだ」バラクはますます赤くなった。「行かないか?」
 もうひとつ角を曲がると、むくむくの毛皮にくるまった男の一団が一列になって足をひきずるように歩いていた。左右にゆれるような妙な足取りで、人々があわてて道をあけている。
「やあ、バラク卿」一団のリーダーが節をつけて言った。
「やあ、バラク卿」他の面々が依然左右にゆれながら声をそろえた。
 バラクはぎごちなく一礼した。
「ベラーのお力が汝を守らんことを」リーダーが言った。
「アロリアの熊神、ベラーをたたえん」残りが言った。
 バラクはまた一礼して、行列が通りすぎるまで立っていた。
「どういう人たちだったんです?」ダーニクが訊いた。
「熊神崇拝者たちさ」バラクは嫌悪をこめて言った。「狂信者どもだ」
「厄介な一団でね」シルクが説明した。「アローンのすべての王国に支部を持っているんだ。すばらしい戦士なんだが、ベラーの高僧の手先でもある。儀式や軍事訓練に時間を費し、地元の政治に干渉するんだよ」
「かれらが言ったアロリアってどこにあるの?」ガリオンはたずねた。
「おれたちのまわりが全部そうさ」バラクが大きな身ぶりをした。「アローンの全王国をひとつにしたのが昔はアロリアだったんだ。もとはひとつの国だったんだよ。あの崇拝者どもは諸国を再統一したがっている」
「むちゃな望みではないように思えますがね」ダーニクが言った。
「アロリアが分割されたのは、ある理由のためなんだ」バラクは言った。「どうしても守らなけりゃならないものがあって、そうするにはアロリア分割が最善の方法だったのよ」
「そんなに重要なものとはなんだったんです?」とダーニク。
「この世で一番重要なものなんだ」シルクは言った。「熊神崇拝者たちはともすればそのことを忘れてしまう」
「ただ、今それは盗まれちゃったんでしょう?」ガリオンはだしぬけに言った。頭の中のあの乾いた声が、バラクとシルクがたった今言ったことと、突然崩壊したかれ自身の人生とのつながりをガリオンに教えた。「ミスター?ウルフが追いかけているのはそれなんだ」
 バラクはガリオンにすばやく目を走らせて、真顔で言った。「この若いのはおれたちが思ってぜ、シルク」
「かれは賢い少年だ」シルクも同意した。「すべてをつなぎ合わせるのはむずかしいことじゃない」イタチのような顔はまじめそのものだった。「もちろんきみの言うとおりだよ、ガリオン。どういう手を使ったのかまだわれわれにはわからないが、だれかがそれをまんまと盗んだんだ。ベルガラスが命令をくだせば、アローンの王たちはこの世をばらばらにしてでもそれをとり戻すだろう」
[ 投稿者:づいたのは at 12:00 | づいたのは | コメント(0) | トラックバック(0) ]

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