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2016年07月12日
っていたことだが
 ガリオンは頑固に首をふった。「わからないな。どうしてそんなことでカル=トラクはこわがったんだろう?」
「さあね」クラルトは言った。「そSCOTT 咖啡機のわけは聞いたことがないな」
 物語には不満が残ったものの、ガリオンば決闘を再現しようというランドリグのいささか単純な計画にすぐ賛成した。一日かそこら剣がわりの棒で互いに身がまえたり突きあったりしたあと、ガリオンは遊びをもっとおもしろくするには何か道具が必要だと考えた。ポルおばさんの台所からやかんがふたつと大きななべの蓋がふたつ、不思議にも消えてなくなり、今や兜と楯で身をかためたガリオンとランドリグは剣を交えSCOTT 咖啡機るために足繁く静かな場所へかよった。
 何もかもうまく運んでいた二人の遊びが一転したのは、年上で背も高く力も強いランドリグが、ばか力を出して木の剣でガリオンの頭をたたいたときだった。やかんのふちがガリオンの額にくいこんで血が流れだした。突然耳鳴りがし、異常な興奮をおぼえて、ガリオンは地面から起きあがった。
 その後何が起きたのかさっぱりわからない。かろうじておぼえているのは、カル=トラクに挑む叫び声が口からほとばしりでたことだけだったが、その言葉さえガリオSCOTT 咖啡機ンには理解できなかった。目の前のランドリグの見なれたまぬけ面が無残に崩れた醜悪な顔にとってかわり、ガリオンは頭の中に煮え立つようなほてりを感じて、狂ったようにその顔に何度も棒をふりおろした。
 やがて嵐がさり、ガリオンの足もとには逆上した攻撃に気を失ったあわれなランドリグが倒れていた。かれは自分のしたことにちぢみあがったが、同時に強烈な勝利を口中に味わった。
 そのあと、農園内の怪我の手当を一手にひきうけている台所で、ポルおばさんが余計な口は一切きかずに二人の手当をした。ランドリグの傷はそうひどくはなさそうだったが、顔は早くも腫れあがって数ヵ所が紫色になりはじめ、最初は目の焦点がなかなか合わなかった。頭に冷湿布をし、ポルおばさんのせんじ薬のおかげでランドリグはみるみる回復した。
 しかしガリオンの額の切り傷にはもう少し用心が必要だった。おばさんはダーニクに少年をおさえつけさせると、針と糸をとって袖の裂けめでも縫うように平然と傷口を閉じあわせ、その間患者の口から発せられるわめき声には耳も貸さなかった。彼女が関心を示したのは、総じて、二少年の一騎打ちの怪我よりもへこんだやかんのほうらしかった。
 縫合がすむとガリオンは頭痛がして、ベッドへ運ばれた。
「少なくともカル=トラクはやっつけたよ」かれはポルおばさんにうわごとのように言った。
 彼女は鋭くガリオンを見つめた。「トラクのことをどこで聞いたの?」と問いつめた。
「カル[#「カル」に傍点]=トラクだよ、ポルおばさん」ガリオンは辛抱強く説明した。
「質問に答えるのよ」
「農夫たちが--クラルトじいさんやみんなが--ブランドやボー?ミンブルやカル=トラクなんかの話をしていたんだ。ランドリグとぼくはその真似をして遊んでいたんだよ。ぼくがブランドで、ランドリグがカル=トラクさ。残念ながら楯のおおいをはずすところまでいかなかったけどね。そうなる前にランドリグに頭をたたかれたんだ」
「よくおきき、ガリオン」とポルおばさんは言った。「注意深くきいてもらいたいのよ。二度とトラクの名を口にするんじゃありません」
「カル[#「カル」に傍点]=トラクだってば。ただのトラクじゃなくて」ガリオンはくり返した。
 次の瞬間おばさんの手がとんだ--そんなことをおばさんがしたのははじめてだった。横っ面をはたかれて、ガリオンは痛いというよりびっくりした。それほど強い平手打ちではなかったからだ。「いいこと、二度とトラクの名をしゃべってはいけないよ。絶対に! これは大事なことなのよ、ガリオン。あなたの身の安全がかかっているのよ。約束してちょうだい」
「そんなに怒らなくたっていいじゃないか」ガリオンは傷つけられた口調で言った。
「約束しなさい」
「わかった、約束するよ。あれはほんの遊びだったんだ」
「大変おろかな遊びですよ。ランドリグを殺してたかもしれないのよ」
「ぼくはどうなのさ」ガリオンは文句を言った。
「あなたには決して危険はおよばないわ。さあ、もうお休み」
 怪我とおばさんに飲まされた奇妙な、苦い飲み物のせいで、頭がふらふらし、うとうとしていると、おばさんの低い豊かな声が、「ガリオン、わたしのガリオン、あなたはまだ若すぎるわ」と言うのが聞こえたような気がした。しばらくして、魚が銀色の水面へ浮上するように深い眠りから目ざめたかれはぼんやりとおばさんの声を聞いた。「おとうさん、あなたが必要なんです」それからかれは再び不穏な眠りにひきずりこまれ、黒い馬にまたがった黒い姿につきまとわれた。男は冷たい憎悪と恐怖めいたものを漂わせてガリオンの一挙一動を監視していた。そしてその黒い姿の背後に、これはポルおばさんにも黙、ランドリグと戦っていたときに垣間見たのか、それとも想像なのか、邪悪な物言わぬ木に生《な》る恐るべき果実のような、醜くくずれた顔が隠れていることをガリオンは知っていた。
[#改ページ]


   
[ 投稿者:づいたのは at 11:53 | づいたのは | コメント(0) | トラックバック(0) ]

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