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2017年05月09日
かねばならないとは
「戦うにはむごいやりかただな」シルクが言った。
「やりすぎだよ」黒い服のマーゴ兵たちが負傷者にとどめをさそうと峡谷へはいっていくのを見ながらガリオンは言った。
「まったく」シルクの声はいまにも吐きそうだった。「戦いは完了だ。死はまだこれからだがね」
「残っている兵はうまく砂漠を横断できるかもしれないよ」
「まずむりだな」
「よし、そこまでだ」近くの露頭した岩かげから、黒装束のやせた男があらわれた。つがえた弓をかまえている。「見物は終わりだ、さあ、おまえたちの仲間がいる野営地へ行こうじゃないか?」
シルクは両手を見える位置において、ゆっくりと立ち上がった。「足音ひとつ立てなかったな、おい」
「そういうふうに訓練されているのさ」弓を持った男は答えた。「歩け。仲間がお待ちかねだ」
 シルクはすばやくガリオンに目くばせした。(状況が把握できるまで言うとおりにしよう)かれの指が忠告した。(こいつはきっとひとりじゃないぞ)
 かれらは回れ右をして峡谷の底まで土手をすべりおりた。男は弓をつがえたまま、油断なくかれらのあとにつづいた。昨夜テントを張った小谷の南端で、弓で武装した黒装束の一団がベルガラスたちを見張っていた。どの男も頬に傷があり、マーゴ人特有の角ばった目をしているが、どことなくマーゴらしくないところがあった。これまでガリオンが見たマーゴ人は肩がいかつく、傲慢な態度が特徴的だった。ところがここにいる男たちはやせぎすで、用心深いと同時に妙にゆったりした物腰をしている。
「ほらね、高潔なるタジャクさん」サディがリーダーとおぼしきやせた顔の男に向かって、こびるように言った。「わたしの言ったとおりでしょう。ほかの従者はこのふたりだけですよ」
「人数はわかってるんだ、奴隷商人」耳ざわりなアクセントでやせた顔の男は答えた。「おまえたちがクトル?マーゴスにはいったときからずっと見張っていたんだからな」
「そりゃまあ、わたしどもも隠れようとしたわけじゃありませんからね」サディはおだやかに抗議した。「ここに身をひそめていたのは、砂漠の端で起きたあの争いに巻き込まれたくなかったからですよ」かれはいったん言葉をきった。「しかし、高潔なダガシ族がどうしてニーサの奴隷商人の行動に口だしなんぞする気になったのか、そこのところがわかりませんな。わたしどもがこっちへきたのは、なにも今度がはじめてじゃないんですよ」
 タジャクはそれを無視して、硬い岩石のように黒い目でガリオンとその仲間を凝視した。「おまえの名前は、奴隷商人?」ややあって、かれはサディにたずねた。
「スシス?トールのウッサでございます、ちゃんと登録してある奴隷商人ですよ。ごらんになりたいなら、しかるべき書類も全部そろっています」
「従者にニーサ人がひとりもいないのはどういうわけだ?」
 サディは罪のない顔で両手を広げた。「ここ南部で戦争が絶えないせいで、たいがいのニーサ人はクトル?マーゴスへ行くのを渋っているんですよ。ですから、外国人を雇うしかないんです」
「そうかもしれん」ダガシ人は感情のこもらない平板な声で言うと、サディに射ぬくような一瞥を与えた。「おまえは金に興味があるだろうな、スシス?トールのウッサ?」いきなりたずねた。
 サディの死んだような目が輝き、かれはいそいそと両手をこすりあわせた。「ええと、それでは、そのことについて話しあいませんか? どうお役にたてばよいのでしょうか? いくら払っていただけるんです?」
「それはおれの頭《かしら》と話しあう必要がある」タジャクは答えた。「おれの受けた命令は、奴隷商人の一行を見つけ、あるささいな奉仕にたんまり金をはずむ人間のところへ連れていくということだ。そういう申し出に興味があるか?」
 サディはためらった。なんらかの指示を求めて、かれはベルガラスのほうへこっそり視線をすべらせた。
「どうなんだ?」タジャクがいらいらと言った。「興味あるか?」
「もちろんです」サディは慎重に答えた。「頭《かしら》とはどなたなんです、タジャクさん? わたしを金持ちにしてくださるというそのお方は?」
「おまえが会ったら、名前と、しなければならないことは、頭《かしら》の口から教えてもらえ--カーシャでな」
「カーシャ?」サディは叫んだ。「そこへ行ひとことも言わなかったじゃないですか」
「おれの言わなかったことはほかにもいっぱいある。どうだ? おれたちと一緒にカーシャへ行くのか?」
「選択権はあるんですか?」
「ない」
 サディは力なく両手を広げた。
(カーシャってなんだい?)ガリオンの指がシルクにたずねた。
(ダガシ族の本拠地だ。悪評高い場所さ)
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2016年11月10日
チューピクは甲板で
「敵は将来のゲランを恐れているのよ--いまのかれではなくて。以前にもこういうことがあったのを物業二按おぼえているわ」
「アシャラクがぼくの両親を殺したときのこと?」
 ポレドラはうなずいた。「かれの本当の狙いはあなただったのよ」
「しかし、ゲランをかれの母親からいったいどうやって守ったらいいんです? つまり--もしその男がさっきみたいにセ?ネドラの夢にあらわれて、あんなことをさせることができるなら、ぼくはどうしたら--?」
「あれはもう二度とおきないわ、ベルガリオン。わたしが処理したから」
「でも、どうやって? だって、あなたは--その--」
「死んでいるから? それは必ずしも正確ではないのよ、でも、心配しないで。ゲランはしばらくは安全よ、セ?ネドラは二度とさっきのようなことはしないわ。それ以外のことで、わたしたち話し合う必要があるのよ」
「わかりました」
「あなたはなにか重大なことに接近しつつあるわ。すべてを教えてあげることはできないけれど、『ムリンの書』をぜひ見る必要があるの--写しのほうではなくて、本物公屋貸款の原本を。そこに隠されているものを見なくてはいけないわ」
「セ?ネドラをおいていくわけにはいきません--いまはとても」
「彼女なら心配いらないわ、それにこれはあなたにしかできないことなのよ。ムリン川の廟へ行き、古写本を見てちょうだい。とっても大事なことなの」
 ガリオンは肩をそびやかした。「わかりました。夜が明けたら出発します」
「もうひとつ」
「なんです?」
「〈珠〉を持っていかなくてはいけないわ」
「〈珠〉を?」
「あれがないと、見なくてはな雀巢奶粉らないものを見ることができないのよ」
「よくわからないな」
「向こうへ着けばわかるわ」
「わかりましたよ、ポレドラ」ガリオンはそう答えてから、悲しそうな顔をした。「さからう理由なんてないんだ。生まれてからずっと理解できないことばかりしてきたんだから」
「いまにいっさいがあきらかになるわ」ポレドラはガリオンを元気づけた。それからとがめるような目つきになって、ガリオンをながめた。「ガリオン」その口調がポルおばさんそっくりだったので、ガリオンは反射的に答えた。
「なに?」
「ねまきも着ないで、夜走り回ったりしちゃだめじゃないの。風邪をひくわ」

 コトゥで雇った船は小さかったが、川旅にはぴったりの作りだった。喫水が浅く、船幅が広い小船はときおり木っ端のように上下に揺れた。漕ぎ手である屈強な男たちは、ムリン川のゆるやかな流れにさからってさかんに櫨を漕ぎ、湿地をぬける曲がりくねった流れを進んでいった。
 日が暮れるころにはコトゥから十リーグ上流に達し、船長はタールを塗ったもやい綱の一本を枯木に用心深くつないだ。「闇の中で水路を見つけようとするのは賢明じゃないんです」船長はガリオンに言った。「曲がるところをひとつまちがえば、来月いっぱい湿地帯をさまようことになりますからね」
「まかせるよ、船長」ガリオンは言った。「口出しはしないつもりだ」
「エールをジョッキ一杯いかがです、陛下?」
「いい考えだね」ガリオンは同意した。
 しばらくあとで、ガリオンはジョッキを片手に手すりにもたれ、敏捷に動く蛍の光をながめながら、蛙たちの果てしないコーラスに耳をかたむけていた。暖かな春の夜で、湿地帯のじめじめした強い匂いが鼻孔を満たした。
 かすかに水しぶきの音がした。魚でもいるのだろう、あるいはカワウソかもしれない。
「ベルガリオン?」笛のような奇妙な声がはっきりと言った。手すりの向こうから聞こえてくる。
 ガリオンはビロードのような闇に目をこらした。
「ベルガリオン?」また声がした。足元のほうだ。
「なんだ?」ガリオンは用心して答えた。
「話したいことがあるんだ」また小さな水しぶきがあがって、船がわずかにゆれた。船を木につなぎとめているもやい綱が水にひたり、すばしこい影が綱をつたって、流れるようなふしぎな動きで手すりのほうへのぼってきた。影が直立したとき、ガリオンはそれから水がしたたる音をはっきり聞き取ることができた。影は小さく、四フィートたらずだった。奇妙なすり足で、ガリオンのほうへ近づいてきた。
「おとなになったね」それは言った。
「しかたないさ」ガリオンはそれの顔を見きわめようとしながら、影に目をこらした。そのとき月が雲の陰からすべりでて、ガリオンは自分の見つめていたのが、湿地帯に棲む沼獣の毛むくじゃらのびっくり目玉の顔なのに気づいた。「チューピクか?」ガリオンは信じられない思いできいた。「おまえなのか?」
「おぼえてたな」小さな毛むくじゃらの生き物はうれしそうだった。
「もちろん、おぼえていたとも」
 船がまたゆれて、毛むくじゃらの影がもうひとつもやい綱をかけあがってきた。チューピクはいらだたしげにふりかえった。「ポッピー!」かれは叱りつけた。「うちへ戻れ!」
「いやよ」彼女はいたって冷静に答えた。
「言われたとおりにしろ!」足をふみならしながら命令した。
「どうして?」
 チューピクは憤懣やるかたないようにポッピーをにらみつけ、ガリオンにむかってたずねた。「みんなあんななのかね?」
「みんなって?」
「女さ」チューピクはうんざりしたようにその言葉を口にした。
「たいていはそうだな」
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2016年09月20日
ルガラの能力がダーニ
〈西方〉の王たちは、すなわちそれはいつまでも眠りからさめないということだと信じた。なぜなら、リヴァ一族はみな殺しにされたことになっていたからである。だがSCOTT 咖啡機評測ベルガラスと娘のポルガラは真実を知っていた。ゴレク一家が虐殺されたとき、たしかにひとりの子供が難を逃れたのだ。そしてベルガラスとポルガラはその子とその子孫を何代にもわたって、ひそかにかくまってきたのである。しかし大昔の予言によれば、リヴァの王が王座に返り咲くのはまだ先のことだった。
 さらに何世紀もがすぎた。このころ〈裏切り者〉ゼダーは世界の果ての名もない都市で、ひとりの無垢な子供に出会い、その子をつれてこっそり〈風の島〉に向かった。純真無垢な子供ゆえ、その子ならもしかするとリヴァの王の剣の柄頭《つかがしら》から〈アルダーの珠〉を奪えるかもしれないと期待したのである。事は期待どおりにはこび、ゼダーは子供と〈珠〉を懐SCOTT 咖啡機開箱に〈東方〉へ逃げ帰ろうとした。
 女魔術師のポルガラは当時、センダリアのとある農場に身を隠し、彼女をポルおばさんと呼ぶ小さな少年とともに暮らしていた。この少年こそがリヴァ一族の最後の子孫で孤児のガリオンなのだが、ガリオンは両親の素性を知らずにいた。
 ベルガラスは〈珠〉が盗まれたことを聞きおよび、センダリアにかけつけて、ゼダーと〈珠〉の捜索に娘を協力させようとした。ポルガラが少年も同行させることを主張したため、ガリオンは事情をまったく知らないまま、ポルおばさんとベルガラスについて農場をあとにした。ベルガラスについてガ優思明リオンが知っていることといえば、かれがときおり農場へやってくる語り部であることだけで、ガリオンはベルガラスをおじいさんと呼んでいた。
 農場に暮らす鍛冶屋のダーニクも一行についていった。まもなく新しい仲間が加わった。チェレクのバラク、ドラスニアのケルダーである。ケルダーはシルクとみんなから呼はれていた。しばらくすると、〈珠〉を求めるかれらの旅に新顔がふえた。アルガリアの馬の首長ヘター、ミンブレイトの騎士マンドラレン、ウルゴの狂信者レルグ。それに偶然セ・ネドラ皇女が加わったかたちになった。皇女は父親でトルネドラの皇帝ラン・ボルーン二十三世と喧嘩のすえに、宮殿を逃げだして、一行のメンバーになったのだが、探索の旅についてはなにも知らなかった。こうして、『ムリンの書』の予言どおり、一行の顔ぶれがそろったのだった。
 ドリュアドの森へやってきた一行は、かねてよりひそかにガリオンをつけねらっていたマーゴのグロリム、アシャラクにでくわした。そのときガリオンの心のなかにある予言の声がガリオンに話しかけ、かれは素手と〈意志〉でアシャラクを倒した。アシャラクは炎に焼かれてあとかたもなく消えてしまった。ここにいたってようやくガリオンは自分に魔術の力がそなわっていることを知った。ポルガラはおおいに喜んで、これからは魔術師にこそふさわしい名前ベルガリオンと名乗るべきだといった。彼女はこのとき、ひたすら待ちつづけた気の遠くなるような歳月がついに終わって、予言どおりガリオンがリヴァの王座につく人物であることを確信したのだった。
 さて、〈裏切り者〉ゼダーは急いでベルガラスから逃げる途中で、おろかにも西のグロリムの高僧であるクトゥーチクの領土に足をふみいれた。ゼダー同様、クトゥーチクもトラクの弟子だったが、このふたりは数世紀にわたっていがみあっていた。ゼダーがクトル・マーゴスの荒れ果てた山をこえているとき、クトゥーチクはかれを待ち伏せて〈アルダーの珠〉と、〈珠〉にふれても死なない清らかな心の持ち主である子供を奪い取った。
 ベルガラスはひきつづいてゼダーを追っていたが、アルダーのもうひとりの弟子であるベルティラの知らせで、今や〈珠〉と子供がクトゥーチクの手中にあることを知った。ベルガラスをのぞく一行はニーサへ向かっていた。ニーサには蛇をあがめる民が住んでおり、かれらに君臨する女王サルミスラは、ガリオンをとらえて宮殿へ連れていった。しかしポルガラがかれを女王から解放し、サルミスラを蛇に変えてしまった。サルミスラは以後永遠に蛇の姿で民を支配することになった。
 ふたたび一行と合流したベルガラスは、一行を率いて困難な旅をつづけ、マーゴの砂漠の山のてっぺんに建つラク・クトルという闇の都へついた。クトゥーチクとの対決を目的に、けわしい山をのぼったかれらだったが、クトゥーチクはこれを予期して子供と〈珠〉とともに一行を待ちかまえていた。やがてベルガラスとクトゥーチクの一騎打ちとなった。追いつめられたクトゥーチクは禁じられた呪文を使おうとして失敗し、跡形もなくほろびてしまった。かれの死んだあとには骨一本残らなかった。
 クトゥーチクの敗北の衝撃で、ラク・クトルは山頂から根こそぎなだれおちた。グロリムたちの都が倒壊し、瓦礫の山となっていくあいまをぬって、ガリオンは間一髪で無垢な子供を抱き上げ、安全な場所へ連れて行った。逃げるかれらをマーゴ人の王タウル・ウルガスの軍勢が追いかけた。しかしアルガリアの領土にはいると、アルガリアの軍勢がマーゴ軍をくいとめ、撃退した。こうしてようやくベルガラスは〈珠〉を本来の場所に戻すべく、〈風の島〉へ向かったのだった。
〈風の島〉へつき、リヴァ王の広間において、エラスタイドの日に、エランドと呼ばれている例の子供が〈アルダーの珠〉をガリオンの手に渡し、ガリオンは王座を背に〈珠〉をあるべき位置、つまり、リヴァ王の大きな剣の柄頭《つかがしら》にのせた。このとき〈珠〉が炎につつまれ、剣は冷たい青い火をはなって輝いた。これをもって、ガリオンがリヴァの王座の真の継承者であることが証明され、いならぶ者たちはかれを〈リヴァの王〉、〈西方の大君主〉、〈珠の保有者〉と認めたのである。
 ボー・ミンブルの戦いのあと署名された協定により、リヴァの王となるべくセンダリアのつましい農場からやってきた少年は、ほどなくセ・ネドラ王女と婚約した。だが、婚礼がおこなわれないうちに、かれの頭のなかの予言の声が、書庫へ行き、『ムリンの書』の写本を手にとるよううながした。
 その大昔の予言によれば、ガリオンはリヴァの剣をとって傷のある神トラクと対決し、殺すか殺されるかの戦いを挑むことを運命づけられていた。そして世界の運命はその結果にかかっているのだった。トラクはガリオンの即位によって長い眠りからさめつつあった。この対決でふたつの相対する〈宿命〉すなわち予言の、どちらかひとつの勝利が決められるのだ。
 ガリオンは軍を率いて〈東方〉へ侵攻することもできた。かれの心は恐怖でいっぱいだったが、危険にたちむかうのはひとりで十分だと決心した。ベルガラスとシルクだけがかれについていった。かれらは夜明けにリヴァの城塞をひそかに出発し、トラクのいる北方の〈夜の都市〉の廃墟めざして長い旅についた。
 しかしセ・ネドラ皇女は〈西方〉の王たちに訴えて、ガリオンの無事をはかるため、アンガラク軍を攪乱した。彼女はポルガラの援助を得て、センダリア、アレンディア、トルネドラを行軍した。おびただしい数の軍勢を同行させて、〈東方〉の軍勢と戦わせるのがねらいだった。両軍はタール・マードゥの都をとりまく平原で衝突した。マロリーのザカーズ皇帝の軍とマーゴ人の狂った王タウル・ウルガスの軍にはさまれて、セ・ネドラの軍は全滅の危機にひんした。しかしアルガリアの族長の頭《かしら》、チョ・ハグがタウル・ウルガスを殺し、ナドラクの王、ドロスタ・レク・タンがセ・ネドラ側についたことによって、セ・ネドラの軍はからくも撤退した。
 しかしながら、セ・ネドラ、ポルガラ、ダーニク、子供のエランドは捕虜となってザカーズにつきだされ、ザカーズはゼダーの審判を待ってかれらをクトル・ミシュラクの廃墟へおくりこんだ。ゼダーはダーニクを殺し、急遽かけつけたガリオンが見たのは、ダーニクの死体にすがって泣くポルガラの姿だった。
 ベルガラスは魔術を駆使した果たし合いでゼダーを地中深く埋まった岩に封じ込めた。しかしこのころには、トラクの眠りは完全にさめていた。こうして、そもそものはじめより敵対していたふたつの宿命は、廃墟と化した〈夜の都市〉で対決した。そして〈光の子〉ガリオンが〈闇の子〉トラクをリヴァの王の剣で抹殺し、闇の予言はむせび泣きながら虚無へ逃げ込んだのである。
 ウルと六人の生き神はトラクの死体をひきとりにきた。ポルガラはダーニクを生き返らせることを神たちに嘆願し、かれらはしぶしぶこれに同意した。さらに神々はダーニクに魔術の贈物をした。そうしたところで、この先ポクのそれに劣ることはありえないからだった。
 こうして一行はリヴァの都に帰り着いた。ベルガリオンはセ・ネドラと結婚し、ポルガラはダーニクを夫にした。〈珠〉はふたたび本来の場所におさまって、〈西方〉を守った。そして七千年におよんだ神々と王たちと人々の争いに終止符が打たれたのである。
 いや、そう思われた。
[ 投稿者:ずのうちにま at 17:33 | ずのうちにま | コメント(0) | トラックバック(0) ]

2016年08月31日
レナ王妃は泣
 アンヘグ王が国民総動員令によって呼びかけたにもかかわらず、熊神教信者たちはまだ何らの軍事行動も起こしてはいなかった。後からチェレク艦隊に加わることを、かれらはも免疫系統っともらしく約束したが、しばらくするとその弁解や引きのばし工作はますますあからさまになってきた。それらの背後で動いているのがグロデグだということを、王妃はよく承知していた。強壮な男たちのほとんどは軍艦に乗りこみ、アルガリアの中心部に陣どったアンヘグ王に合流するために、長い列をなしてアルダー川をさかのぼっている最中だった。したがってヴァル?アローンの宮廷を守る近衛兵は、白髪まじりの老人や、髭も生えていないような少年ばかりだった。そんな中で熊神教信者だけはいすわり、グロデグはその勢力を最大限にのばそうとしていた。
 グロデグは王妃に拝謁する免疫系統ときはあくまでも丁重な態度で接し、彼女の熊神教との過去のかかわりを口にすることはなかったが、その申し出はしだいに強制的な色をおびてきた。イスレナ王妃が申し出に気の進まないようすを見せれば、それがあたかも肯定のしるしであるかのように、勝手にことを進めるのだった。しだいにイスレナ王妃の支配力はうすれ、武装した熊神教信者の力をたてにしたグロデグが勢力をのばしはじめた。熊教徒たちは宮殿をがわもの顔にのし歩き、勝手に命令を下し、傍若無人に玉座のまわりをうろつきまわっては、必死に国をおさめようとする彼女の努力をあからさまにあざ笑った。
「いくらこれは何でもひどすぎるわ、イスレナ」王妃の私室で二人きりになった夜、たまりかねたようにメレルが言った。彼女は、じゅうたんの上を怒ったよう免疫系統に歩きまわっていた。ろうそくの光がその髪を柔らかな金色に輝かせていたが、その顔に浮かんだ表情は決して柔らかとはいえなかった。
「だって、どうすればいいの」イスレナ王妃は両手をもむようにして嘆願した。「あの男は人前では決してわたしを軽んじているそぶりなど見せないわ。それにかれの判断はいつもチェレクにとっては最善のもののように思えるのよ」
「あなたには助けが必要だわ」メレルが言った。
「でも誰に頼めばいいの」イスき出さんばかりの声を出した。
 レディ?メレルは緑のビロードのガウンの前をなでつけながら答えた。「今こそポレン王妃に手紙を書くべきときよ」
「何て書けばいいのかしら」
 メレルは部屋の隅のテーブルを指さした。そこには書きものをするための羊皮紙とインクが用意されていた。「まずはお座りになって。そしてわたくしが言うとおりに書いてちょうだい」
[ 投稿者:ずのうちにま at 16:50 | ずのうちにま | コメント(0) | トラックバック(0) ]

2016年08月08日
幸いなことにい
 春の最初の日、リヴァ王ベルガリオンはたいそう落着きのない様子で玉座に座っていた。かれはセ?ネドラ王女の十六歳の誕生日が近づくのをつのる不安の中で見守り、ついにその日がやってきたときは、ほとんど恐慌状態にお中醫師ちいっていた。六人の裁縫師が一週間がかりで縫いあげた深い青色の胴衣はいまだに体にしっくりこなかった。肩はきつすぎ、固いカラーがかれの首をこすった。そればかりか黄金の王冠でさえいつもより重く感じられ、玉座はますます座り心地が悪いような気がした。
〈リヴァ王の広間〉はこの日のために盛大な飾りつけがなされていたが、旗や花輪や淡い色の春の花々をもってしても広大な部屋のがらんとした壁を完全に覆うことは不可能だった。いならぶ貴賓たちは、今日という日の重要性にほとんど注意を払うこともなく談笑しあっていた。ガリオンは自分がこれから重大事に直面しようというのに人々があまりに無関心な顔をしているので、いささか気分を害していた。
 ポルおばさんは新しい銀色のガウンをまとい、髪に小冠をつけてかれの左側に控えていた。ベルガラ避孕方法スもまた新品の緑色の胴衣をつけてだらしなく右側にもたれかかっていたが、すでに着衣はしわくちゃになっていた。
「そんなにもじもじするのはおよしなさい」ポルおばさんが静かに言った。
「自分のことじゃなければ何とでも言えるさ」ガリオンは恨めしげに言い返した。
「なるべくそのことを考えなければいいのだ」ベルガラスが忠告した。「なあに、すぐに済んじまうさ」
 そこへ普段よりもいっそう険しい表情を浮かべたブランドが入ってきた。脇のドアから入ってきたかれはつかつかと玉座に歩み寄った。「〈要塞〉の門の前にニーサ人が避孕 藥 副作用来ております、陛下」ブランドは静かな声で言った。「サルミスラ女王の使者として、式典に臨席したいと申しておりますが」
「信じられないよ」ガリオンは〈番人〉の思いがけない告知にすっかり驚きながらたずねた。
「それほどでもないわ」彼女は答えた。「むしろおおいに考えられることよ。これは一種の外交上のはったりのようなものね。ニーサ人はかれらの女王の現状をあまり口外したくないんでしょう」
「どうしよう」ガリオンはたずねた。
「そいつも入れてやればいい」とベルガラス。
「ここにですか」ブランドはショックを受けたような声を出した。「よりによってニーサ人をこの広間に入れろというのですか。まさか本気でおっしゃってるんじゃないでしょうね」
「ブランドよ、ガリオンはいまや〈西の大君主〉なのだぞ」老人は言った。「西の国々といえば当然ニーサも含まれるではないか。別に連中と友好を結んで何の益があるわけではないが、最小限の礼はつくしておこうじゃないか」
 ブランドの顔が不賛成の意でこわばった。「陛下のご決断は?」かれは直接ガリオンにたずねた。
「そうだな--」ガリオンはしばしためらった。「たぶん入れた方がいいと思うけれど」
「人前で口ごもるんじゃありません」ポルおばさんが厳しい口調で言った。
「ごめんよ」ガリオンは慌てて言った。
「それに謝るのも禁物よ」彼女はつけ加えた。「王さまは決して謝ったりしないものよ」
 ガリオンは困ったような顔でポルおばさんを見た。そしてブランドの方を振り返った。「ニーサの使節に臨席するよう伝えてくれ」かれはどことなく相手をなだめるような口調で言った。
「ところでブランド」ベルガラスが脇から口を出した。「ことをあまり波立てないようにしてほしい。大使の資格で来ているニーサ人が不慮の死などとげようものなら、重大な外交問題になりかねんからな」
 ブランドはいささか堅苦しく一礼すると、くるりと向きを変えて立ち去った。
「あそこまで言わなくてもよかったんじゃない、おとうさん」ポルおばさんがたずねた。
「積年の恨みというものはなかなか消えんものでね」ベルガラスが答えた。「ずばりと言ってやった方が、あとあとの誤解がなくていい場合もあるのさ」
 蛇女王の大使が入ってきたとたん、ガリオンはあっと驚いた。何とそれはサルミスラの宮殿の宦官長、サディだった。どろんとした目の痩せぎすな男は頭を剃り、ニーサ人の慣例である青緑色に輝く長衣をまとっていた。宦官は玉座に進み寄ると、しなやかな動作で一礼した。
「リヴァのベルガリオン王へ、蛇人の女王にして永遠なるサルミスラよりご挨拶を申し上げます」かれは独特の低いものうげな女声であいさつした。
「よく来た、サディ」ガリオンはとおり一ぺんの返答をした。
「わたしどもの女王より、このよき日に心からのお祝いを申し上げたいとのことです」
「だが本当は喜んでなどいないんだろう?」ガリオンの口調がかすかにきつくなった。
「正確にはそうではありません」サディはいささかの動揺も見せずに答えた。「恐らくはきっと心からお喜びになったであろうという意味です。ただし女王にそれをわからせることができればの話ですが」
「女王はどうしているんだ」サルミスラ女王から受けた恐ろしい仕打ちを思い出しながらガリオンはたずねた。
「気難しくなりましたね」サディは穏やかに答えた。「別にさして変わったこともありません。ったん食欲が満たされれば一、二週間は寝ていますし。ただし先月脱皮したときは、ひどく不機嫌になりましたが」そう言ってかれは天をあおいだ。「いや、あれはひどいものでした」宦官は小声になった。「何しろそれが終わるまでの間、彼女は召使いを三人も噛んだのですから。むろん三人とも、即死しましたがね」
「そんなに凄い毒だったのか」ガリオンは仰天してたずねた。
「女王はいつだって毒のあるお方ですよ、陛下」
「ぼくが言ったのはそういう意味ではない」
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2016年07月18日
ない任務を負って
帰宅した娘が玄関を開けるなり「前の管理人のCさんがまた戻ってきてるね!」と言う。なんでも1ヶ月か2ヶ月、臨時でまたマンションの管理人をするからよろし頭髮保養くと、下で会った時に挨拶されたらしい。わたしは何も知らなかった。

では、昨日まで管理人だったA氏はどうしたのだろうかと、今日になって掲示板を見たら、Aさんが一身上の都合で退職したので、Cさんがしばらく臨時で管理人を努めると書いた紙が貼ってあった。

そんなこと何も言っていなかった整容なと、Aさんに最後に会った時のことを思い出す。

つい、4,5日前のことだ。
めずらしく、玄関のチャイムが鳴った。

エントランスのインターホンではなく、いきなりチャイムが鳴らされることはほとんどないので、な中醫腰痛んだろうと受話器を上げるとAさんが名乗り、「玄関ポーチの電球を替えに来ました」と言う。

電球が切れてるなんて気づかなかったけどなぁ……と思いながら玄関を開けると、脚立を持ったAさんが居て、すぐ済むのでドアを閉めておいていいですよと言った。ドアを開けていると邪魔だから、かもしれない。あるいは犬が居たから?

ドアの外でガタガタと音がするのを聞いてから部屋に戻ってしばらくすると、またチャイムが鳴らされた。終わったという報告だろうから、インターホン越しに話すだけでよかったのかもしれないけれど、なんとなく気になって玄関まで行ってドアを開けた。脚立を片したAさんがいて、天井を指差し、「終わりました」と言う。

「点きましたね」やっぱり切れてたんだなと、明るいライトを見上げてわたしは言った。
「はい、点きました」とAさんは律儀に応える。
「ありがとうございました」とわたし。
「おじゃましました」とAさん。
「しつれいします」と笑顔を交わして、ドアを閉めた。

いつもはあまり人の顔を見ないのに、なぜだか妙にAさんの笑顔が印象に残った。

あのとき、辞めることはもう決まっていたのかな、まさか急な病気とか怪我じゃなければいいけれど……と思いながら、今日は玄関の出入りのたびに、Aさんが替えてくれたライトを見上げている。

今まで注意して見たこともなかったそのライトは、埋込み式で、どこから開けて電球を替えるのか、下から見ただけではわからない。触ってみるには脚立が要る。

何度も見ているうちに、Aさんが辞める直前に替えていった電球のことがじわじわと気になってきた。
なんだか腑に落ちなかったのだ。
本当に電球は切れていたんだろうか。

ひょっとしたら、あそこには、四角くて小さい盗聴器とか隠しカメラとかが仕込まれている、あるいは、仕込まれていたものが回収されたんじゃないか?

Aさんはどこかのエージェントだったかもしれない。

人は他人が思いもかけいたりするものなのである。

---

最近は、「スキャンダル」というアメリカドラマにはまっている。

とにかく、CIAだのスパイだのハッカーだのが出てくる海外ドラマの観過ぎだ。
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2016年07月07日
ブックオフは説明するまでもなく


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2016年07月06日
とにかく広すぎて
1-140Q5233F4

 
「ある。魔法が必要なんです、セフレーニア。マーテルたちはいちばん上のテラスに集まってます。右手に百|歩《ペース》ばかり行ったところで修護精華液す。何を話しているのか聞きたいんですよ。あなたの魔法なら届くんじゃありませんか」
 教母はうなずいた。
「階段から離れたほうがいいでしょう。呪文はかなりの光を放ちます。ここにいると気づかれたくはありませんから」
 一行は埃っぽい通路を引き返し、セフレーニアはサー?ベヴィエの磨き上げた盾をベリットから借り受けた。
「これでいいでしょう」そう言ってすばやく呪文を編み上げ、解き放つ。騎士たちは急に輝きはじめた盾のまわりに集まって、鏡のような表面に映ったぼんやりした人影に見入った。その人影が話し合う声はごく小さかったが、言っていることははっきりとわかった。
「わが黄金があれば、われらの目的に適《かな》う地位が手に入るという、そなたの約束はむなしいものであったな、アニアス」オサがあの轟《とどろ》くような声で話していた。
「またしてもスパーホークに邪魔されたのです、陛下」アニアスは平伏せんばかりにして自己弁護をはかっていた。「恐れていたとおり、あの男に何もかもめちゃくちゃにされてしまいました」
「スパーホークめ!」オサは汚い悪態をつき、玉座のような輿《こし》の肘掛けに拳を叩きつけた。「あやつがいると、わが魂はただれそうになる。その名を聞くのみにても苦しみが襲う。そなたはあやつをカレロスから遠ざけておくはずであったろう、マーテル。何ゆえに余とわが神を失望させる」
 マーテルは落ち着いていた。
「まだ失敗したわけじゃないぜ、陛下。その点はアニアスも同じことだ。猊下《げいか》を総大司教の座に就けるのは、目的を果たすための手段に過ぎない。その目的は達成されたんだからな。ベーリオンはこの屋根の下にある。アニアスを昇進させてエレネ人に宝石を引き渡させるという計略は、やや不安の残るものだった。このほうがずっと手っ取り早いし、直接的だ。要は結果としてアザシュが望むものを手に入れればいいのであって、個個の計画が成功したか失敗したかはどうでもいいことだ」
 オサはうなるような返事をした。
「たぶんそうなのであろう。しかしベーリオンはいまだわれらが神の手に落ちてはおらぬ。なおあのスパーホークの手の中にあるのだ。そなたは兵を差し向けたが、あやつはやすやすとそれを圧倒した。われらが主《あるじ》は死そのものよりも恐ろしい召使を差し向けてあやつを殺そうとなさったが、あやつは今なお生きておる」
「スパーホークだって所詮は人間なんだ。いつまでも幸運は続かないさ」リチアスが例の鼻にかかった声で言った。
 オサがリチアスに向けた視線は、明らかに死を意味するものだった。アリッサは息子をかばうようにその肩に腕を回し、今にもリチアスを守って立ち上がろうとするかに見えた。アニアスが警告するようにかぶりを振った。
「そなたはこの私生児を認知することで限界を露呈したな、アニアス」オサの声には軽蔑が香港服務式公寓あふれていた。言葉を切り、一同を見まわして、いきなり大声を上げる。「そなたたちにはわからんのか! かのスパーホークは|未知なるもの《アナーカ》だ。人の運命《さだめ》はすべてはっきりと決まっておる--アナーカを除いて。アナーカは運命の外に生きる者、神々にさえ恐れられる者だ。アナーカとベーリオンは、この世の人にも神々にもわからぬ形で結びついておる。しかも女神アフラエルが手を貸しておるのだ。その目的は不明だが、われらがまだ生きていられるのは、ひとえにベーリオンがあやつらに協力的ではないという、その一点ゆえなのだ。スパーホークは、その気になれば神にさえなれるであろう」
「だがまだ神じゃない」マーテルは笑みを見せた。「やつはまだ迷路の中だし、仲間を捨てて独りで襲ってくる気遣いもない。スパーホークのやることは予想がつくんだ。アザシュがアニアスとおれを選んだのもそのせいさ。おれたちがスパーホークを知ってて、やつがどういうことをしようとするか、予測できるからなんだ」
「あやつがここまでやり遂げることもわかっておったというわけか」オサは鼻を鳴らした。「あやつがここまでやってきて、われら自身とわれらの神の存在までもが危うくなっていることは、わかっておるのであろうな」
 マーテルははるか眼下の床の上で踊り狂っている者たちを見下ろした。
「あれはいつまで続くんだ。今こそアザシュの指示が必要なのに、あれが続いてるあいだは注意を引くことさえできない」
「儀式はもう終わりに近づいておる。みな消耗しきっておるから、死ぬのはそう先のことではない」
「けっこうだ。やっとわれらがご主人と話ができる。身が危ういのはアザシュも同じだからな」
「マーテル!」オサがいきなり緊張した声を上げた。「スパーホークは迷宮を破った! 寺院への通路に到達しておる!」
「人を集めて行く手を阻め!」マーテルが怒鳴った。
「それはやったが、すっかり引き離されておる。追いつく前にあやつはここまで来てしまうであろう」
「アザシュを起こさないと!」アニアスがかん高い声で叫んだ。
「儀式の邪魔をすれば、死だ」とオサ。
 マーテルは背筋を伸ばし、小脇に抱えていた華麗な兜を手に取ってぼそりとつぶやいた。
「おれの出番ということらしいな」
 スパーホークは顔を上げた。あとにしてきた王宮のほうから、破城槌が石壁にぶつかる音が響いている。
「ありがとう、セフレーニア、もういいでしょう。前進します。オサは王宮側の階段のある、隠し部屋の扉を破ろうとしています」
「ベヴィエとタレンがうまく隠れてくれてればいいが」とカルテン。
「大丈夫、ベヴィエにはやるべきことがちゃんとわかってるさ」スパーホークが答えた。「これから寺院に下りる。この屋根裏部屋は--まあ何と呼んでもいいが--、ここで戦おうとしたら敵に囲まれてしまうだろう」セフレーニアに向き直り、「背後で階段を封鎖する方法が何かありませんか」
 セフレーニアは顔をしかめた。
「あるとは思います」
「自信がなさそ祛斑うですね」
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2016年06月14日
となくその貧
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 諏訪神社の境内の風に揺れる老木がこの裏道を囲むビルの壁に映し出されていて僕を囲んでいるような気がした。またこの裏道に停めてあるバイクや積み荷を降ろし耳鳴治療ているトラックのヘッドライトがこんな昼間なのに点燈していてあの夜8時近くのバス停までの道を彷彿とさせるような感じがして……昼間なのでもちろんヘッドライトは点いてないのだが……目が眩むような気がした。



 もう夕暮れだった。もう大学の付近も夕暮れを迎えつつあるんだなあと僕は少し感傷的な気分になっていた。

 昨日、夕暮れの大学のまわりを僕は一人トボトボと歩いていた。近くのOKホームセンターに買物に行っての帰りだった。心のなかは何かで非常に焦っていた。そのた能恩め足は非常に早く動かしていた。まるでロボットのように僕は歩いていた。

 僕は以前から気に懸かっていた緑ヶ丘の梺の家の風景をソッと眺めやっていた。なんしそうな家々の並びが失恋で傷付き果てた僕の心にとても似つかわしく思えたから……

 でもそれは墓だった。僕は今までそれを住宅街だとばかり思っていた。貧しげな古い住居群だとSCOTT 咖啡機開箱ばかり思っていた。

 僕はその錯覚が哀しかった。なぜ今まで気づかなかったのだろう。僕はそれを大学2年目が終わろうとしている今日まで気づかなかった。



 いつかなにかの雑誌で『都会のなかの孤独』という文章を読んだことがある。なんとなくそんなようだった。僕はアーケードのなかを何かの思い出にしがみついてしがみついて離れない哀しい怨霊みたいなような気がしていた。       

 僕は痩せうなだれていたし、頬が凹んで顔色は青かった。これは死相と言えるのかもしれなかった。『アーケードを歩く死相の少年』という言葉が聞えてくる。僕はアーケードを歩くのは恥かしかった。周囲の目が気になる。歩くのに力みが入る。僕はロボットのように歩いていた。

 でもふとある鏡に映った僕の姿は良かった。その鏡に映った僕の姿は3年半前の思い出を彷彿とさせるように華やかだった。
[ 投稿者:ずのうちにま at 11:22 | ずのうちにま | コメント(0) | トラックバック(0) ]

2016年06月08日
アザシュのやり
「おいら、王室の使者なんだよ」スパーホークとクリクが近づいてくると、タレンは急いでそう言った。「ベルトに手を伸ばすのはやめてよ、二人とも」
「王室の、何だって?」スパーホークが尋ねる。
「あんたに女王陛下からの伝言背幕を持ってきたんだ、スパーホーク」
「見せてもらおう」
「暗記してきてるんだ。伝言が敵の手に落ちたらまずいだろ」
「わかった。聞かせてもらおう」
「個人的な伝言なんだよ、スパーホーク」
「構わん。ここにいるのはみんな友人だ」
「どうしてそんな態度を取るのかわからないな。おいらは女王命令に従ってるだけなのに」
「伝言はどうした、タレン」
「ええと、陛下はシミュラへ出発する準備ができたよ」
「それはよかった」スパーホークの声は冷たかった。
「あんたのことをとても心配してる」
「感動だな」
「でも気分はいいって」タレンが付け加える言葉は、言えば言うほどぎこちなくなった。
「そう聞いて安心した」
「それから、ええと、愛してるって」
「あとは?」
「その、これで全部だよ」
「それはまたずいぶん簡単だな。言い忘れてることがあるんじゃないのか。もう一度はじめからくり返してくれ」
「あの、つまり、陛下はミルタイとプラタイムに話してたんだ。もちろんおいらにもね。自分が今何をしてて、どんなふうに思ってるか、伝えられる方法があればいいのにって」
「それをおまえに言ったのか」
「それは--おいらもその部屋にいたよ」
「つまりここへ伝言を届けろと命じられたわけではないんだな」
「ええと、まあ、はっきりとはね。でも女王陛下の望むことは、かなえてあげるべきなんじゃないかな」
「よろしいですか」セフレーニアが割って入った。
「もちろんです」とスパーホーク。「知りたいことはもうわかりましたから」
「そうかもしれないし、そうではないかもしれません」教母は少年に向き直った。「タレン」
「はい、セフレーニア」
「あなたがこんな貧弱な、嘘であることが明白な作り話をするのははじめて聞きました。ほとんど意味のないたわごとです。とくにストラゲンが、まったく同じ使命を帯びてきていることを考えればね。本当にこの程度の話しか考え出せなかったのですか」
 タレンはどうにか戸惑った表情を取り繕った。
「嘘じゃありません。女王陛下は、たしか1064激光嫩膚にさっき言ったとおりのことを言ったんです」
「それはそうでしょう。でもあなたはなぜ、そんなどうでもいいことを伝えに馬を飛ばしてきたのです」
 タレンは少し混乱しているようだった。
「ああ、やれやれ」セフレーニアは嘆息して、しばらくスティリクム語でアフラエルに毒づいた。
「どうも話がわからないんですがね」カルテンが憮然として言った。
「今すぐ説明してあげます。タレン、あなたには他人を騙《だま》すすばらしい才能があったはずですね。あなたの悪知恵はどうしてしまったのです。いったいどうして、せめてもう少し信じられるような話をでっち上げなかったのですか」
 タレンはわずかに身じろぎした。
「そんなことをしちゃいけないような気がしたんだ」と渋い顔で答える。
「友だちに嘘をついてはいけないと?」
「まあそんなとこだよ」
「神に称《たた》えあれ!」ベヴィエが熱っぽく叫んだ。
「感謝の祈りを始めるのはもう少し待ってください、ベヴィエ。タレンの急な心変わりは、どうも見かけどおりのものではなさそうです。これにはアフラエルが関わっています。あの女神はひどく嘘がへたなのですよ。信仰のあり方から、どうしてもそうなってしまうのです」
「またフルートですか」とクリク。「でも、どうしてタレンを同行させたいんでしょう」
「誰にわかります?」セフレーニアは笑った。「この子が好きなのかもしれません。それとも対称性を重んじているのか。あるいはほかに何か--この子にさせたいことがあるのか」
「じゃあ、おいらが悪いわけじゃないんだね」タレンがすばやくそう言った。
「たぶんね」セフレーニアは少年に微笑みかけた。
「それで少し気が楽になったよ。追いかけていったら気を悪くするだろうってことはわかってたし、真実ばっかりで息が詰まりそうだったんだ。機会があったらうんとお仕置きしてやってよ、スパーホーク」
「いったい何の話をしてるのか、わかるか」ストラゲンがティニアンに尋ねた。
「もちろん。いつか説明してやろう。どうせ信じられないだろうが、とにかく説明はしてやるよ」
「マーテルのことは何かわかったのか」とカルテン。
「昨日の早朝、東門から出ていったそうだ」スパーホークが答える。
「じゃあ一日分は差を詰めたわけだな。手下は連れてるのか」
「アダスだけです」とクリク。
「そろそろ何もかも話していいのではありませんか、スパーホーク」セフレーニアが言った。
「そうですね」スパーホークは大きく息を吸いこんだ。「諸君には、正直にすべてを語ってはいなかった」
「それが何か目新しいことだとでも言うのか」とカルテン。
 スパーホークはそれを無視して先を続けた。
「サレシアでグエリグの洞窟を出て以来、わたしはずっとあとを尾《つ》けられていた」
「クロスボウの射手にか」とアラス。
「それも関係があったのかもしれんが、よくわからない。クロスボウを射かけてきたやつとその手先は、たぶんマーテルに雇われていたんだろう。今もまだ脅威なのかどうかは不明だ。中心になっていた男は、もう死んだ」
「誰だったんだ」ティニアンが尋ねる。
「それは別にどうでもいいことだ」ペレンのことは秘密にしておこうと、スパーホークは心に誓っていた。「マーテルには他人を思いどおりに動かす手段がある。本隊から離れて行動したいというのは、それも理由の一つだ。信頼できるはずの者たちに攻撃されたときのことを考えて、しょっちゅう背後を気にしていたんでは、いい仕事は期待できないからな」
「クロスボウの射手でなければ、誰に尾けられている」アラスが執拗に尋ねた。
 スパーホークは数ヵ月前から出没している影のことを話して聞かせた。
「それがアザシュだと思うのか」とティニアン。
「そう考えれば辻褄《つじつま》が合うんじゃないか」
「どうしてアザシュにグエリグの洞窟の場所がわかったのです。洞窟からずっと追ってきているのだとすれば、アザシュはその場所を知っていたことになると思いますが」そう尋ねたのはベヴィエだった。
「スパーホークに殺される前、グエリグは侮辱的な言葉でアザシュをからかったのです」セフレーニアが言った。「アザシュがそれを聞いていたことは、いくつかの証拠からも明らかです」
「どういう侮辱だったんだ」アラスが好奇心をむき出しにして尋ねた。
「焼いて食ってやるって脅したんですよ」クリクが簡潔に答える。
「それはいかにトロールでも、なかなか思いきった発言だ」とストラゲン。
「それはどうかな」アラスは異を唱えた。「洞窟の中では、グエリグは絶対に安全だったはずだ--少なくともアザシュからは。だがスパーホークに対しては、じゅうぶんな備えはできてなかった」
「お二人さんのどちらか、少し詳しく説明してくれないか」ティニアンが言った。「あんたらサレシア人はトロールの専門家だからな」
「どれほどの光明を投げかけることができるか心許《こころもと》ないがね」ストラゲンが笑って答える。「トロールに関してほかのエレネ人より多少詳しいのは確かだが、それでも大してよく知ってるわけじゃない。おれたちの祖先がはじめてサレシアにやってきたときには、トロールとオーガーと熊の区別もろくにつかなかった。今おれたちが知ってるのは、ほとんどがスティリクム人に教えてもらったことなんだ。はじめてスティリクム人がサレシアにやってきたとき、若き神々とトロールの神々のあいだで、ちょっとした軋轢《あつれき》が生じたらしい。だがトロール神たちはかなり早い段階で自分たちの不利をさとって、どこかに身を隠したんだそうだ。伝説によると、グエリグとベーリオンと二つの指輪は、その隠れ場所と何か関係があるんだそうだ。一般に信じられてるところでは、トロール神たちはグエリグの洞窟のどこかにいて、ベーリオンの力でスティリクムの神々から守られている」アラスの顔を見上げて、「あんたが言わんとしてるのはこのことか」
 アラスはうなずいた。
「ベーリオンの力とトロール神の力が結びつけば、アザシュでさえいささか用心深くならざるを得ない。グエリグがそんな脅しをかけられたのはそのせいだろう」
「トロール神てのはどのくらいいるんだ」カルテンが尋ねた。
「五体、だったかな」ストラゲンがアラスのほうを見て言う。
 アラスがうなずいた。
「食の神、殺す神、それに--」言いかけてセフレーニアを見やり、ややあわてた様子で、「--その、多産の神、と言っておこう。あと氷の神という、これはすべての天候の神なんだろう。そして火の神だ。トロールの世界観は単純にできてる」
「だとすると、スパーホークがベーリオンと指輪を持って洞窟から出てくれば、アザシュはすぐに気づいたはずだ。そしてあとを尾けたに違いない」とティニアン。
「友好的じゃない意図を持ってね」タレンが補足した。
「前にもあったことです」クリクは肩をすくめた。「ダモルクはレンドー国じゅうでスパーホークを探しまわったし、シーカーはラモーカンド国で行く先々に現工作椅われた。口は予想がつきますよ」
 ベヴィエは眉根を寄せて考えこんでいた。「何か見落としているような気がするんですが」
「たとえば?」とカルテン。
「それがどうもはっきりしなくて。でも、重要なことだという気がするんです」
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