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2016年03月02日
ポは避けるよ
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セールストークを聞いてしまうことがある。
耳を傾けるとビデオチューナーの紹介だという。
こちらには、テレビを見る習慣がないのにチューナーもあったものではな廣州長隆い。
電話の相手は、畳み掛けるようにトークを続ける。
「ビデオを借りに行かなくても見放題で、しかもタダなんです」
熱心な声が耳もとにこだまする。

待てよ、、そんなことになったら、それこそ密室から出なくなってしまう中風復健だろう。
そう思うと、
ふと、安部公房の小説『壁』に収められた「魔法のチョーク」という短編小説が浮かんできた。
昭和26年の上期、第25回芥川賞を受賞している。
この小説、現代を暗示しているかのようなところがある。
梗概を紹介すると、
「とある画家の男が不思議なチョークを手にする。それで自室の壁に絵を描くと絵は壁から飛び出し、
現実のものになる。 たとえば、食べ物を書くと食べ物になる。
欲しいものを書きさえすれば手に入る。
外の世界を遮断して密室の壁を相手にチョークで描いていると幻想の自由自在をもたらしてくれる。
ところが、いつしか男は果ててしまう」というもの。

人間がどんどんと無機質の人間になっていくことを暗示している作品で、
私が読んだ昭和45年頃でさえ、いかにも架空の空想的な小説に感じたものだった。

この主人公が異質に思えたが、今や架空の世界ではなくなっている気がする。
使うものは壁とチョークから画面のついたデバイスに変わり、デバイス上に様々なものを搬屋映し出し、
食べ物はおろか、ありとあらゆるものを現実に手に入れている。
密室にこもって壁に向かっている主人公をいかにも奇異なものと捉えたが、
いつの間にか、人とふれあうことがない、このような状態を自然と思えるようになっている。

奇妙な写真家、「アラーキー」の愛称で知られる荒木経惟氏は、
そういった乾ききった現代の無機質ぶりに警告めいた言葉を発している。

『デジタルカメラはよくない。水を使わないとダメだよ。
乾いちゃって。
デジタルなんか、頭の脳みそが砂だらけになっちゃうぞ。
いま失われていくのは、ぜったい、水気だね』。
彼の言葉を俟つまでもない、
人と人との有機的なうるおいが必要だ。
[ 投稿者:香徑 at 15:16 | 香徑長洲 | コメント(0) | トラックバック(0) ]

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