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2013年12月15日
『きまぐれ星のメモ』(星新一)を読んだ
 エッセイ集です。
 文庫版の初版発行が1971年(昭和46年)なので、おそらく雑誌掲載の時期は昭和40年前後だと思います。40年以上前に書かれたエッセイということになりますが、今でも十分読めます。

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■鋭い洞察力
 鋭い洞察力をもって書かれたエッセイが多いですが、その一例を。
   テレビを眺めて

 テレビの出現以来、茶の間における一家団欒という現象は大幅に失われた。画面を眺めるほうが忙しいからである。いいの悪いの言ってみても仕方がない。これが時の流れというものだ。悪くもないというのは、茶の間でつのつきあわせる率もまた、大きくへっているに違いないからである。
 しかし、全家庭がそうなってしまったわけではない。わずかに例外が残っている。どこにかというと、皮肉なことにテレビのホームドラマに登場する家庭である。
 その人たちは、普通ならテレビを眺めてすごすべき時間を、そんなものがあったかなと、そしらぬ顔をして生活している。老若男女すべてテレビに興味のない者ばかり、こんな家庭は現代において、きわめて異常というべきではなかろうか。
 (中略)
 現代を舞台にした小説を読んでも、テレビ局の出てくるのはあるが、視聴している人物を描写した文にお目にかかることはめったにない。あるいは、テレビ視聴は非常に恥ずべき行為であり、良識ある作家は公然と描写するのを避けているのかもしれぬ。

 さらりと書かれているので大したことはないと錯覚してしまうが、テレビを眺めてそこに映っていないものを見つけ出すというのは、意外と難しいことではなかろうか。
 たぶん多くの人はテレビのホームドラマを見ても「一家団欒のシーンだな」としか思わず、そこに存在しないものを探そうとすらしないはず。
 存在しないものといっても宇宙人やUFOなどといった論理の飛躍はしない。ホームドラマの家庭と現実の家庭を論理的に比較検討し、そして、テレビの中に存在しないものを発見しているのだ。
 目に見えるものを「ある」というのは簡単だが、そこにあるべきものなのに「ない」というのは難しい(と、昔読んだ本に書いてあった受け売りを言ってみたりする)。

 ちなみに、『小説を読んでも、テレビ局の出てくるのはあるが、視聴している人物を描写した文にお目にかかることはめったにない』とあるが、氏の作品には存在したりする。『白い服の男』収録の「老人と孫」などがそうだが、もしかして上のエピソードからインスピレーションを得て書いたのだろうか?

■当時の人の科学知識
 当時の人の様子が書かれている部分を読むと、やっぱり昔書かれたエッセイなんだなと思う部分もある。下は当時の人の科学知識が書かれた部分。
 ソ連が人類はじめての人工衛星スプートニク一号を、突如として打ちあげた時には、ずいぶんと、いろいろな会話を楽しむことができた。「月と火星とでは、どちらが遠くにあるのですか」と聞いてきたのは、ある一流電機会社の課長クラスの人であった。もっとも、技術畑の人ではない。多くの人が私に、この種の率直な質問を気楽に話しかけてくる。科学者や技術者といった、重々しい肩書きを持っていないせいだろうか。それとも、理知的な人相をしていないせいだろうか。だが、いずれにしろ、相手に恥をかかせることだけはしない。私は頭をかき、どもりながら答えた。「さあ、ぼくもよく知っているわけではありませんが、火星のほうが遠いようですよ」

 それとこの部分を見ると、星新一は若い人の考え方に近かったことが分かる。
 先日、あるテレビ局の座談会に出席し、未来の食事に話題が進んだ時、私はなにげなく「味のいい低カロリー食、さらには、すばらしい味のゼロ・カロリー食が普及するでしょう」と喋った。(中略)若い出席者たちは「早くそうなるといい」と賛成してくれたが、年配の司会者はあわてた様子だった。あとで聞くと、未来の食事は一粒で満腹といった形になるものとばかり思っていて、それで番組の進行を予定していたのである。戦前の人と戦後育ちとの感覚の差を知ることができ、思わぬ経験となった。


■昔も無報酬の依頼
 最近、クールジャパン推進でクリエイターに無報酬で参加を呼びかける提案があり物議を醸したが、似たような事案はあいかわらず昔もあったようだ。
 世は未来ブームとともに万博ブームでもあるようだ。先日、私のところへ万国博本部から手紙が来た。印刷されたものだから、各方面に相当な数を出したものだろう。内容は
 「貴下に万博のモニターになっていただき、お知恵を借りたい。無報酬だが、いずれなんらかの形で謝意を表します」
 とあった。専門家だけでは手におえないので、広くアイデアを求めたいというのだろう。無報酬とは酷いと思ったが、その時はさほど腹も立たなかった。
 私が顔をしかめたのは、数日後である。新聞を見ていたら、万博長者の写真特集がのっていたからである。
 万博会場のために土地を提供し、大金を得て豪華な邸宅を作った人たちである。その人たちはそれでいい。先祖伝来の田畑や山林を手離したのだから補償をもらうのは正当である。
 しかし、土地の提供者には大金を払い、頭脳を提供させようという人には無料。あまりに大きな相違である、万博の上層部にどんな人がいるのかは知らないが、頭脳の働きには一円も払う必要がないという考えの持ち主なのだろう。

 それにしても、万博長者を新聞で写真特集したりして大丈夫なのかと心配したりする。万博長者の所に下心のある人が集まって来たりしないだろうか。

【漫画】
 4コマ漫画も作ってみた。
【4コマ漫画】「月と火星」「未来の食事」
[ 投稿者:うえぽん at 21:08 | 読んだ(星新一) | コメント(2) ]

2013年12月01日
『宇宙のあいさつ』(星新一)を再読
 読み直したということで、その中から1編を4コマ漫画にしてみた。
【コミPo】【4コマ漫画】「危機」

 もうすぐクリスマスということで、この話をチョイスしました。
 星新一作品のオチにはキリストが出てくるのがいくつかありますが、キリスト教徒だったのかな? と思ったりします。

●一行説明 兼 目次
 ネタバレなしで各作品を25文字以内で説明すると以下の通りです。

 「宇宙のあいさつ」:侵略した新惑星の住民が妙におとなしい
 「願望」:お稲荷さまが六十万人目の参詣者の夢枕に出現する
 「貴重な研究」:不老不死の人体実験として召使に試薬を投与する
 「小さくて大きな事故」:弱みを握られ結婚させられた女が男への犯行を試みる
 「危機」:地球を攻撃しようとした宇宙人が帰っていく
 「ジャックと豆の木」:豆型装置を伝ってジャックが宇宙人と接触する
 「気まぐれな星」:地球人に似た哀れな住民がいる星へ救援物資を届ける
 「対策」:万引き犯の女と警備係の男
 「宇宙の男たち」:惑星間連絡ロケットで地球へ帰還する老人と青年
 「悪人と善良な市民」:自分を殺しに来た強盗。見覚えあるが思い出せない
 「不景気」:出資者の依頼でエス博士が新しい細菌を発明する
 「リンゴ」:日に日に見る夢のリンゴが減っていくというバーの客
 「解決」:人生相談の解決事務所に男女二人がやってくる
 「その夜」:全ミサイルを発射することになったミサイル基地
 「初夢」:年賀状を眺めながら居眠りをする
 「羽衣」:無重力ガウンを身にまとい過去の地球を訪れる
 「期待」:盗んだ卵を孵卵器で暖める
 「反応」:文化を高める資格があるか地球人を調べる
 「治療」:電子頭脳の平均人間と対話させ人々の劣等感を治療する
 「タイムボックス」:タイムマシンならぬタイムボックスの開発費回収を模索
 「景品」:ヘミングウェイを読みたいが景品としては読みたくない
 「窓」:新聞のテレビ欄に記載のない深夜番組
 「適当な方法」:病院に運ばれてきた青年のアル中を治療する
 「運の悪い男」:借金で苦しむ男の部屋に、逃走中の強盗が押し入る
 「贈り主」:発信地を特定できない正体不明の通信者
 「タバコ」:おれは元日から禁煙する
 「初雪」:窓の外の雪を眺め続ける
 「救助」:岩ばかりの星で見つけた遭難者を救助する
 「繁栄の花」:武器を持たない平和な星から繁栄の花が贈られる
 「泉」:壁から生えてきた腕。そこから採血して血を売る
 「美の神」:鬼艇長ひきいる探検隊がある惑星の遺跡を調査する
 「ひとりじめ」:逃げ遅れたと思っていた相棒と街で出会う
 「奇妙な社員」:優秀だが休みをよくとる奇妙な社員
 「砂漠の星で」:砂漠の星でピラミッドを発見し探索
 「夜の流れ」:夜の山中で女性のまぼろしを見る
 「あとがき」:アルファ博士

 この中で一番の注目作品は「繁栄の花」ですね。学校の教科書にも載っているそうな。似たようなアイデアの作品には「アフターサービス」(『妖精配給会社』収録)というのもあります。


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【余談】
 ラノベを読んでたら「普通」のルビに「リア充」と書いてあった。
 リア充とは普通であることなんだな。
[ 投稿者:うえぽん at 08:43 | 読んだ(星新一) | コメント(2) ]