キャンドルナイトの2日前の19日の朝、2年くらいお会いしていなかった軽井沢のクマおばさんから電話がありました。「ダイズの苗が余ってるんだけど、いるかい?」というお話でした。
私、ダイズ蒔かなきゃ蒔かなきゃと思っていながら、まだ蒔けてなかったんです。去年は作らなかったから種もなかったし。もう、まわりの畑ではダイズの芽が大きくなってるし、困ったなあと思っていたところでした。だから、こんなありがたい話はないの。
クマおばさんはもう高齢なんで、自動車を処分しちゃって運転はやめていました。それで、私ももう高齢なんで自動車を処分した話をすると(← こらこら! 正直に言いなさい!)、・・・ いやまあ、事情ははしょって、自動車の運転ができない話をすると、「じゃあ、なんとかするわ」と電話は切れました。
そしたら、2時間半後にはクマおばさんは立科町に到着して、私は待ち合わせのツルヤの駐車場に自転車で迎えに行きました。
私さあ、確かにダイズの苗はありがたかったんだけど、本当は「なんで前の晩くらいに電話くれなかったかな」なんて、うらめしい気持ちになってたんだよ。
だってさ、部屋の中は片付け直前のわやわやなありさまの、とっても恥ずかしい事態だったし、2年ぶりにお会いするっていうのにお茶請けのお菓子ひとつなかったし(ホント、漬け物もくだものもなかったの)、それに軽井沢から届けに来てくれるっていうのに、その苗をタダでもらうわけにはいかないでしょ? なのにキャンドルナイトの料理の材料費くらいしか手元になくて、とっても金欠だったわけです(こりゃ、前の晩に電話もらってもおんなじだったけど)。
あーあ、がっかりさせちゃうか、怒らせちゃうか、いずれにしても来なけりゃよかったなんて思われそうで、気分は次第に滅入る一方なのでした。
でもさ、でもさ、でもでもさ、
よわい45にして、だんだん人生の仕組みっていうのが分かってきたんだもんね。人生には「偶然」はなくて、そこには「意味」が満ちてるの。大きな「守り」のなかで「学び」を重ねて「幸せ」を発見していけばいいの。
自動車免許を失ったことだって、そうでしょ?
新しい暮らしは、当初予想もしなかったような「幸せ」の種に満ちてたよ。ふーちゃんは決して私を見捨てなかったし、自転車でがんばってると、世間の目はかえってあたたかかったよ。自転車のスピードで移動する暮らしは、私の時間の感覚を一変させたよ。
トラクターを借りれなくなったことだって、新しい身の丈の不耕起の農園ができた。土仕事の楽しさの原点を取り戻した。
だからさ、ツルヤの駐車場に自転車で向かう頃には、
「すべてはうまくいっている。ありがと、ありがと、ありがと」ってべダルを踏んで、なんだか気分も軽やかになってきた。
クマおばさんを自動車に乗っけてきたのは、これまた本当に久しぶりのミュージシャン俊智(シュンチ)でした。あれま、びっくり。やっぱり2年くらいは会ってなかったんじゃないかな。彼はチョー2枚目の見た目ビジュアル系ですけど、かつて私たちの自給畑ネットワークに参加して畑仕事したり、マクロビに凝ってたり、修行僧みたいな一面のある好青年です。
俊智ネット
ダイズ苗はご覧の通り。徒長もせず、実に植え時のナイスな苗たちでした。量も充分。苗箱に5枚分ギッシリ。
お2人を恥ずかしい自宅にお招きしたんですけれど、別に気にする様子もなく(本当に気にしなかったかは分かんないですけど)、クマおばさん持参の玄米おにぎりやサラダで早めの昼食となりました。私はお茶だけ出したけど、おかげで格好がつきました。
それでさ、一番言いにくい苗の料金のことをおずおずお尋ねすると、「何言ってるのよ。私は出世払いを返しに来たんだよ」ってクマおばさんは言いました。
「出世払い?」
「そうだよ。あんたうどんを私に『出世払い』で食べさせてくれたろ。私はそのことが気になって気になってしょうがなかったんだよ」
今から2年前の「アースディin佐久」で、私たちが手打ちうどんのブースを出店した話は、ここでも何度かしましたけど、クマおばさん、その私たちのブースに来てくれたんですね。そのときクマおばさんには手持ちのお金がなくて、それで私は500円のうどんを「出世払いでいいから、今日は食べてってよ」って、うどんを差し上げたんですって。そんなことがあったっけ。すっかり忘れてました。
「だからお金なんていいんだよ。これで借りを返したんだよ」
俊智は毎日アルバイトなんだけど、クマおばさんから電話があった今日だけは、お休みで体が空いていたんですって。
なんかねー、やっぱりねー、人生って好きよ。
えっと、それでね、厨房でのお料理をする仕事がやりたくて、それで自転車で通える所でそういう仕事を探し始めて2ヶ月目になりますけど、先日立て続けに2件のお話が舞い込んで、そのうちのひとつが昨日面接でね、それでね、採用されました。7月2日から仕事です。
だよねー、やっぱりねー、なんかねー。
とってもうれしいです。
7月2日からは、私のお料理生活の第2ステージの幕開けとなります。