
【「たてしな元気畑」農園日誌】
3月11日夜、2泊3日の安曇野市の坐禅断食会場を抜け出して(スタッフやってます)、片道2時間かけて佐久市で行われた講習会に参加しました。今後の農産物出荷に影響する大事な講習会だから全員出席のことという、おっかない御触れがあったもんでサボる勇気がありませんでした。
講習会のテーマは「ポジティブリスト制」。5月末から施行される改正「食品衛生法」が定める新しい制度です。これは農家にとっては一大事ともいうべき、影響の大きい重大な法制と思うんですけれど、当の農家にも周知が徹底していないのが現状のようです。
大体、講習会参加者の農家のひとりが怒ってましたけれど、そんな意味の分かんない外国語使うな!ってことです。英語だっていいけれど、普通の常識で意味が分かんないものは日本語にして欲しいですよ。ブラック・リストなら分かるけどさ。「悪者一覧表」でしょ? ポジティブリストって何? 「積極的一覧表」? 意味わかんねーよ! 講習会講師は、パルシステム(農産物宅配業者の首都圏コープGPSが改称したそうです)の高橋さんです。
この「ポジティブリスト制」はあらゆる農家に影響があるんですが、特に有機農家にとっては大変な事態を招きかねない制度なんです。
発想は悪くないと思うんです。消費者保護の観点からはとても望ましい改革とも言えます。一言で言いますと、「すべての農薬について基準が設定され違反は流通が禁止される」という制度です。「基準」というのは残留基準ですね。出荷の時点で、農産物に残留が許容されるのはどのくらいか、という基準をすべての農薬に設定し、そしてここが要注目ですけれど、残留農薬の検査をして違反が発見されればそのロットの農産物はすべて回収され流通を禁止されるということです。・・・・・・いいですよね。ここまでやってくれてこそ安心できますもんね。
法律には、「行い」を問題にしているものと、「結果」を問題にしているものとがあります。
日本の有機農業に対しては「有機認証」というのがありますが、これは「行い」を見て有機農業と呼べるかどうかを判断してくれるんです。はっきり言ってこの狭い国土で、ひょっとしたら有機農家の農産物からだっていろいろな化学物質や農薬が検出されるかも知れない。でも、農産物そのものを検査するんじゃなくて、どんな考え方で農業をしてるのか、どういう記録をとっているのか、どういう対策をとっているのか、ということだけを問題にして、「有機認証」にふさわしいかどうかを判定してくれるわけです。あくまで「行い」に対する審査だったわけですね。言葉を変えて言うと、「行い」だけを問題にしてくれているので、この日本にも有機農家が存在できるんだとも言えるんです。農産物の農薬の残留を検査をされたら、何かが検出されてしまう「有機農産物」もあると思うんです。そういう「結果」を問題にされたら、日本の有機農家の存在は危ういものになる可能性があります。
そして、ここに来て登場した「ポジティブリスト制」は見事に、「結果」だけを問題にする制度なんですね。国内に40ヶ所あると言われている公定法検査所にて残留農薬の検査を行い、そこで基準値以上の残留があれば、即座に当該農産物の流通は禁止され、残りは回収されて処分されます(民間の検査結果は問題とはされません)。これは近隣の畑からの飛散農薬でも容赦されないんですね。そして農薬の登録は作物ごとにされているので、リンゴの殺虫剤として登録されている同じ農薬が飛散して、近所のキャベツ畑にかかったとすると、この農薬はキャベツに使うものとしては登録されていないので、登録外農薬ということで一層厳しい判断が下されます。飛散を受けた被害者の方がより厳しく判定されてしまうというこことですね。検出されさえすればアウト、というような状況です。
私の農園も果樹畑と隣接しているところがあります。「有機認証」の実地検査の際には「行い」を問題とするので、果樹畑と接している畑は10m以上の緩衝地帯を設ける等の取り組みを見てもらって、それで「問題なし」と判断してもらえました。でも果樹の農薬を散布するスピードプレイヤーという乗用散布機は800m以上、風に乗って農薬が飛散するそうです(友だちが言っていたことですが見た目の感覚でもそれは正しいんじゃないかと思います)。そんな中で、ポジティブリスト制によるサンプル調査の対象にされたらどうしよう。なんか出ちゃうかもね。
消費者にとっては、良い方向に向かう一歩となるべき法律だという側面も確かにあります。でも、農薬の飛散を防ぐ実効性のある対策もないまま、飛散の被害者が苦しむことが明らかな規制の面だけを先行させることに大いに危惧と違和感を感じるのです。
このポジティブリスト制。施行は今年5月30日です。
この記事の補足「外国ではじゃんじゃん農薬まいてる・・・」