
代替医療のトリック
【著】サイモン・シン /エドザード・エルンスト
代替医療が注目を集める昨今、こういう論評が出るのは言ってみれば当然なのだ。
今まで、出てこない方がおかしいかったのだと思う。
通常の医療に幻滅や失望を感じた人々が代替医療に向かう流れは、少なからずある。そして、その人々を、多くの場合、善意の療法家たちは温かく迎え入れ、人々は通常の医療では得られなかった種類の満足を得る。
それは、コミュニケーションに割かれる時間の長さであったり、丁寧さであったり、快方に向かっているという実感であったりする。
そして、人々は概ね了解して対価を払う。
では、そこで行われていることの実態は、果たしてなにか。
本書は、そこに焦点を当て、検証する。
ここで細かく検証されているのは、ハリ、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法。簡単に評価されているのは、アーユルヴェーダ、アロマセラピー、レイキ、バッチフラワーレメディ、リフレクソロジー、レイキ等々、私たちが一度は耳にしたことがある代替療法はもちろん、私などはこの本で初めて知ったものまである。
本書の論点は、実に明快である。
その療法の効果は、プラセボ(偽薬)効果ではないと言い切れるのかどうか。
(プラセボ効果は、ネットで調べれば数多く良い説明があるので、そちらを参照されたい。→
Wikipediaの解説はこちら)
そして、大多数の療法がことごとく、この命題の前に沈黙する。
では、開き直ってこう考えたらどうだろう。
これほどまで強力にプラセボ効果を引き出せる代替療法を使うことは悪なのかどうか。
本書は断言する。否、それは医療を暗黒時代へ戻してしまう行為だと。
反論のある方は、ぜひ本書をご一読いただきたい。
そして、ぜひ、問いかけていただきたい。
自分は、思考停止に陥ってはいないか。
そこにあるものが完全な善意から行われているものであったとしても、なにか、その理論に摩訶不可思議なところはないか。
一見、科学的に見える独創的な理論の奥深いところに、それは影のように横たわってはいないか。
本書は、ひとつの命題を投げかける。
なぜ、確実で科学的に証明されている通常医療を避けて、人々は代替医療に向かうのだろう。
本書は、代替医療の検証という姿を借りた、医療の現状への警告かも知れないと思う。
そして、本書を読んで、その検証も納得した上で、元来あまのじゃくな私は、こう思ってしまうのだ。
例えば、今、ちょっとした体の不調があったら、医療機関に行かずになんとか自分で治そうと思うだろう。
ハーブティーであれ、なんであれ、自分にプラセボ効果を確実に起こせる手段があれば、とりあえずそれを試してみるだろう。
こんなことで医者に来るな、と言われそうだし・・・。
結局、多かれ少なかれ、人々はこんな思いを抱えて今の医療を見つめている。
すぐ医療機関の門をたたく社会というのが果たして最善、最良なのかどうか。
それが目指すべき医療の姿なのかどうか。
養生と医療の境界線は、常にぼやけていて霧の中のようだ。
本当に必要とされるものは、なんなのだろう。
そこに有るべきなにかを、人々は切望しているのかもしれない。